4093860726 世界の中心で、愛をさけぶ
片山 恭一
小学館 2001-03

by G-Tools

「十数年前。高校時代。恋人の死。[喪失感]から始まる魂の彷徨の物語」
という帯のコピーと、表紙の写真に誘われて買ってしまった。


冒頭、恋人の遺骨と共にオーストラリアのケアンズへ旅立つ高校生の主人公。
ここから彼の再生の旅が始まるかと思いきや話は過去へ飛び、恋人との馴れ初めから別れに至るまでが現在の描写を織り込みながら描かれている。
そして彼女の遺灰を、遺言通りアボリジニの聖地にまくところで終わった……のではなく、大人になった主人公が婚約者と思われる女性とともに母校を訪れるところで終わっていた。
この本が好きな人には非常に申し訳ないが、感動が薄かった。内容も薄かった。
どうやら文体が好みに合わなかったらしい。テーマは重いはずなのに、文体に重みが足りない。もしかすると、わざと淡々した語り口を狙ったのかもしれないが、それが文章の軽さを生み出しているような気がする。
また、「魂の彷徨の物語」とあるわりには、過去の思い出話がかなりの比重を占め、肝心の喪失感が描き切れていない感がある。私的には喪失感を抱いた主人公が日々をどう過ごし、どんな人に出会ってどう変わってゆくかを読みたかったので、肩すかしを食らった気がした。
読み進めながら何度も村上春樹の「ノルウェイの森」を思い出していた。村上作品の中ではあまり好きではないのだけども、主人公の年代や性格、また恋人の死を扱う点で似ている点がいくつかあるからだ。
両者ではっきり違うのは、喪失感のとらえ方と描き込みの深さ、キャラクターの立ち方、人間関係の雑多さ。「ノルウェイ〜」の方が密度においても構造の複雑さにおいても勝っている。
ただ、比べるのは酷かもしれない。この物語の作者は村上春樹のファンだそうなので、だとしたらどうしてもオリジナル(というか先輩)の方が勝るわけで。
気に入ったシーンはある。それは友人の力を借り、無人島で彼女と二人きりのキャンプをするくだりだ。目的はもちろんただ一つ(笑)。 それが達成されたのかどうかはともかく、この時の主人公たちの心の揺れが眩しかった。(2003.10.25)
追記
映画化されたこの物語はそこそこヒットした。甥っ子もこの話が好きで、何度も観にいったという。「この話、全然感動しなかったけど」と私がいったら「神経が鈍い」というようなことを言われた。今の若い子って、安っぽいシンプルな話で感動しちゃうんだな。

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