時雨沢恵一(電撃文庫)
去年の秋にキノの旅8巻が出て、もうお終いかと思ったら、今年になって9巻が出た。もともとの予定は7までだったと思うし、実際の内容もそんな雰囲気だったから、ここまで続くということは、よほどの人気なんだろう。
普通、シリーズものは巻数が進むに連れて最初の魅力を失うものが多いが、キノはますますパワーアップしている気がして、そこも凄いと思う。
相変わらず国々を旅してさまざまな体験を増やすキノだが、文章に以前より色がついたし、キノの感情も豊かになったような気がする。きっと、作者が別シリーズのアリソンを書き上げたからだろうな。
「毒のあるおとぎ話」というテイストは健在で、これがあまりにツボにはまってうなりたくなるほどだった。
でも、毒ばかりでなく、「ここで落ちるかな」と思わせておいて、ほのぼのとした結末にもっていく話があったり、上手いこと現代の社会現象を皮肉る話があったり、人間のいい加減さを突いた話があったり、ただ笑えるだけの話があったりして、とても面白かった。
1巻の冒頭に、こんな言葉があった。
「世界は美しくなんかない。そしてそれ故に、美しい」
9巻まで読んできて、やっとこの言葉がすとんと腑に落ちた。
(2005.10.15)

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