ジズー・コーダー (枝廣淳子 訳)
ネコ語を話し、ライオンと友だちになれる少年の話--そう知っただけで手を出してしまった。白状すれば、表紙と挿絵が天野喜孝氏だったから、というのも少しはある。


中身は近未来に舞台を置く、普通の(?)冒険談ではあったが、主人公のチャーリー少年が健気で賢くてたくましい。そこが最大の魅力。
ともに大学教授で科学者というチャーリーの両親もユニークで素敵なキャラだ。母はイギリス人、父はガーナ人。生まれてきた子どもの肌はチョコレート色。彼らは良い意味で学者気質を持っていて、人から考えを押し付けられるのを好まず、自分が正しいと思うことをする。息子は学校には行かせず、より多くのことを学べるように家庭教師をつける。おかげでチャーリーは10歳にして数ヶ国語が理解できる!(ネコ話も含めて)
中でも極めつけの教えは「アイデアが浮かばない(つまりどうしたらいいのかわからない)ときは、とにかく情報をあつめること」
これができたら大抵の状況を生き抜いていけると思う。大人にとってもまったくその通り。
ライオンの描写がすてき。きっと作者はライオンを始めとするネコ科の生き物が大好きなのだろう。筆の端々にそんな雰囲気が感じ取れる。
百獣の王の背に乗って夜のパリを疾走するなんて、どんなに素敵なことだろう。
これは3部作らしいが、1作目を読んだ限りでは、時代の設定がイマイチつかめないのが残念。
おぼろげにわかるのは、作品の時代はガソリン自動車が時代遅れになって乗り物はほとんど電気式、携帯電話の充電も太陽電池に頼っているという近未来らしい。それと、なぜかネコアレルギーが急増していたようでもある。
世界の主導権を持っているのは「帝国」と呼ばれる巨大(連合?)国家。チャーリーの祖国イギリスはその支配には収まりきっていないらしい。ひょっとすると、「帝国」は某合衆国の暗喩か? だとすると、極東の「日出る国」は帝国の一部と化していそうだな。
両親を誘拐されてしまったチャーリー少年が、信用できない大人や社会を相手にどう逃げ延び戦うのか、2巻3巻はその辺が楽しみ。
(2005.11.17)

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