クリフ・マクニッシュ(訳:金原瑞人)
世にも恐ろしい魔女を相手に異世界で女の子が戦うこの話は、もともと作者であるクリフ・マクニッシュが娘のために作った話ということで、当然ターゲットは小学生中~高学年。


そのせいか魔女のビジュアルイメージは想像不可能なほど恐ろしいし(一つの顔に4組の歯があるってどういうこと?)、魔女が支配する世界はまるっと一つの星(恐らくはどこかの星系の惑星)ということになっている。異次元の世界ならともかく、魔法の空間を通り抜けるだけで何千光年もの距離を移動できるというのはちょっと考えにくかったりする。その分戦いの場面は長いし、ただならぬ迫力がある。(ファンタジーというのは悪者と戦ってなんぼ、なんでしょうか…)
舞台設定はさておき、この物語で面白かったのは魔法および呪文の概念。魔女の付き人であるモルベスが、主人公のレイチェルに魔法を教える場面が印象的。
魔女の城にある、飾り気のない食堂で、どうやって食事を現出させるかというレッスンで、モルベスはまずレイチェルに食べたい物(たとえばチョコクリームサンド)を想像させる。するとそれらしき食べ物が現れるが、パンはパサパサしているし、味がない。つまり、食感も味もきちんと思い浮かべなくてはならず、こういった細部まで思い浮かべて魔法を実現させる作業が呪文であるというのだ。
「呪文」という言葉はを聞くと、ついつい具体的な言葉の羅列を想像してしまうが、そうではなく概念が呪文になりうるという発想が面白いと思った。
が、細部まで指定しないと実現しない魔法というのはどこかで見た覚えがある。そう、コンピューターのプログラムだ。決められた記述法に従って動かしたいモノ、見せたいモノを指定すればよい。色、形、どんな時にどんな動きをするか、などなど細かくルールに従って記述していってひとつのプログラムを完成させる。完成されたプログラムは、コンピューターという魔法の箱の中で世界を作ることさえ出来る。
いわば、呪文はプログラム、魔女が支配する星イスレアはパソコンの箱、といった具合か。ひょっとすると、イスレアは誰かのパソコンの中に組み込まれたゲームの舞台だったりして。(どこかで聞いたようなネタだな…)
そういえばマクニッシュ氏はIT関連の仕事に就いているということだ。
本筋には関係ないけれど、この本を訳している金原瑞人氏と金原ひとみ嬢は親子だそうで。(2004.5.26)

広告