乙一
短編集。「Calling You」「失はれる物語」「傷」「手を握る泥棒の話」「幸せは子猫のかたち」「マリアの指」
すべて読み終えたときの印象は、まるで深い井戸の底から空を見ているようだった。


主人公はいつも井戸の底にいて、手の届かない青空へ憧れることを恐れて暗い方ばかり見ている、そんなキャラクターだ。そこへ作者がすっと縄ばしごを下ろしてやる話もあるし、井戸の底に置き去りにする話もあるけれど、本質的には大して変わらないだろう。
また、事件の犯人が主人公と非常に親しい相手であることが多く、読後感が切ない。唯一「手を握る泥棒の話」が洒落たミステリ風で暖かな読後感がある。
「マリアの指」以外は角川スニーカー文庫に出ていたのを再録。スニーカー文庫ということは、これらの話はもともと「ライトノベル」という分野として扱われていたわけで、作者によると「ライトノペル」はまっとうな小説として扱われていないという。それだけではないだろうが、謎解きの過程や仕掛けなど非常に面白い部分があるにもかかわらず、そして闇と光の対比が見事であるにもかかわらず、どこかアマチュアくささがあって(例えば、設定にどこか詰めの甘さを感じる)、アンバランスな気がした。
ライトノベルといえば、「キノの旅」や「しにがみのバラッド。」もその仲間に入るんだな(2004.5.26)

広告