綿矢りさ(文藝春秋2004年3月号)
第130回芥川賞受賞作
高校生が主人公で、しかも学校が舞台であることに驚いた。これはまたヤングアダルトみたいな舞台設定だと思いつつ、冒頭の数行は、YAなんてとんでもない! みたいな凝りよう。お見事だとは思うけど残念ながら好きなスタイルではないし、その後につづく本体から見ると、冒頭だけ頑張りすぎかも、という印象を受ける。


読み進むほどに、自分の高校生時代を思い出してひりひりした。今も昔もあの手の疎外感に悩まされる女の子はいるんだと思いつつ、主人公の女の子が持つ疎外感と閉塞感がリアルすぎて、読んでいるとつらい。恐らく書く方も無傷ではいられまいと思うが、そのつらさを最後まで維持したまま書ききったところが凄いと思う。
物語の軸は、主人公→同じクラスのオタクな男の子→アイドルという、ある意味一方通行の感情の流れによって成り立っている。さらに主人公はアイドルに偶然でくわし、声を掛けられるというエピソードが入って、感情の流れはもう少し複雑になる。つまり主人公的には「わたしはあんたが夢中になって追いかけているアイドルの生の姿を知っているのよ」という優越感が生じるわけで、でも本当はアイドルとの出会いには屈辱的な思い出までくっついているので、あからさまに優越感というわけでもない。
アイドルに熱を上げっぱなしのクラスメートを見て悶々とする彼女は、ついに彼の困る顔が見たくて、衝動的に背中に蹴りを入れる。そこに混じる、一種の倒錯した感情に面白味を感じた。
要するに気に入った女の子にちょっかいを出して泣かせてしまう悪ガキの心理とよく似ていると思うのだが、この雰囲気でこの年代でこの蹴りか! という組み合わせの奇妙さは面白かった。
高校生の描写が嫌になるほどリアルに書けるのは現役大学生の特権かしら。(2004.5.26)

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