D.W.ジョーンズ(西村醇子訳)
魔法が存在する国・インガリーに生まれた帽子屋の長女、ソフィーと悪名高い魔法使いハウルが出会う物語。
スタジオジブリ制作「ハウルの動く城」の原作であることは言うまでもないぐらいだろう。
映画は未見なので、比較はできないが、この物語自体はとても面白かった。どうせ魔法の国を出すならこのぐらい無茶苦茶な展開かつ、パロディ使いまくりの方が楽しい。


無茶苦茶さの加減については、まずハウルの人柄。理由はあるにしても、女の子を口説き落とすまでが楽しみだなんて、褒められた趣味ではない。それからのらりくらりとソフィーの追求をかわす上手さときたら、いい加減オトコNo1の称号を付与したいほど。(そんな称号があれば、の話)
それからソフィー。いくら魔女のせいで90歳の老女になったからといって、居候しているハウルの城の中で態度が大きすぎ。火の悪魔カルシファーはこき使われるし、見習い魔法使いのマイケルは八つ当たりの相手。もちろんハウルにも容赦なくて、そこが面白いのだけど。
それなのに自己評価はやたらに低くて「長女はぜったいに上手くいかない」という思いこみの強さには笑っちゃうほど。実際、いかにも長女的な要領の悪さがあって、そこがまた可愛い。
パロディについては、有名なおとぎ話はもちろん、指輪物語からさえも引っ張ってきている。
自分的に一番受けたのは、ソフィーのファミリーネーム。帽子屋だからといって、そのまま「ハッター」はないだろうにと思いつつも、不思議の国のアリスに出てくるイカレ帽子屋=マッド・ハッターを連想して、それが不思議とこの物語のイメージにしっくり合うのだ。
「ソフィー・ハッター」の名をつけられた時から、この物語の女主人公は無茶苦茶な性格を運命づけられたのかもしれない。
名前のことでもうひとつ、火の悪魔カルシファーという名前からは堕天使「ルシファー」を連想する。ルシファーは光の天使であったものが神に背いて反乱を起こしたことになっている。なかなか意味深なネーミングなのだ。
(2005.1.20)
追記
映画版も観た。確かに登場人物は同じだが、「別物」だと思ったほうがいい。だってハウルの敵が入れ替わっているし、ハウルのむちゃくちゃさ加減が8割引きになっているし……。

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