G.P.S
第14回毎日21世紀賞受賞作品
ヴィレッジ・ヴァンガードでこの本を手に取ったとき、作者の名前が分からなくて、本を何度もひっくり返したり裏表紙をめくったりした。
作者名は漢字がひらがなかカタカナのどれかで表記されているはずだという思い込みがいけなかったらしい。
つまり、タイトルの下に書かれていた「G.P.S.」が作者名だった。
作者によればG.P.S=General Problem Solver、つまり、一般問題片付け人という意味だそうだ。


一般問題とは、「なぜ人を殺してはいけないか」「宇宙とは何か」「世界はどのようにして始まり、終わるのか」「サルはどのようにして進化したのか」etc…といった、現在の常識では未解決とされている疑問のことである。
この本は「そうした問いのすべてを解いてしまった(と思っている)一人の男の愛と涙と笑いの実存の物語でもある」。
すべての問いを解くなんてそんな馬鹿なと思いつつ、ついのせられて買ってしまう自分も馬鹿の仲間なんだろう。
もっとも、作者自身もこの「答え」の突飛さを(同時に正当性も)自覚していて、自分のことを「天才かもしれないし気狂いかもしれないしただの凡人なのかもしれない」と言っている。それを判断するのは個々の読者だ。
ことの始まりは老人ホームの介護で生じた問題だった。施設で介護を受ける「Mさんは一日何本までタバコを吸っていいか」とという、ごくありふれた問題に決着をつけようと哲学的に思考を重ねるうち、作者はすべての疑問に決着をつける「答え」を発見したという。ただし、それは周囲の理解を得られず彼を孤独と精神病院に追いやった。
何度も書き直しを重ねたという謎解き(=答えを導き出す過程)は、かなりシンプルで分かりやすく書かれていると思う。
要するに、初めに言葉ありき、言葉無くして世界はあり得ないということなんだけど、説明の引き合いにいきなりガンダムや鈴木光司の「ループ」が出てきたりして、そうすると哲学が一気に身近に感じられる。
とはいえ、言語学者のソシュールにかなり影響を受けているようなので、その学説及び哲学的用語としての「差異」について知っておかないと、なぜそういう結論に達するかの理解が難しいかもしれない。
すべての言葉には意味がなく由来があるのみだと、作者は言っているがそれはつまり「幸福」という言葉の意味をいくら考えても答は得られないが、逆に何をもって「幸福」と呼ぶかを考えるとこの言葉が理解できるというのだ。これには目からウロコだった。
小難しいことはさておき、「くたばれ形而上学(=プラトン的ものの見方)」のスタンスが爽快。まるで思考力による格闘技でも見ているように楽しい本だった。
(2004.6.7)

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