David Almond 著 金原瑞人訳
ヘヴンアイズとはHeaven Eyesのこと。どんな場所にいてもそこに天国を見出す目。
男の子二人と女の子一人が孤児院から「脱走」して、川を下る。廃材をつなぎ合わせて作ったいかだは、ほどなくブラック・ミドゥンという黒い沼地に座礁する。汚れた泥と格闘する三人をすくったのは、「ヘヴンアイズ」と名乗る奇妙な女の子。彼女はこれまた奇妙な老人と二人、廃墟の中にくらしていた。5人はブラックミドゥンから神秘を掘り出すことになる。
という話。


第一章の「ホワイトゲート」がすごく好き。
父を持たず、たった一人の肉親である母に死なれて孤児院に来た女の子がこの物語を語る。
カウンセリングも、世話人の独り善がりな愛情も、彼女には鬱陶しいだけなのがよくわかる。親がいなくても、未来が開けていなくても、今この現在、彼女や、彼女といっしょに暮らしている子どもたちは不幸ではない。でも大人たちはかわいそうな「傷のある子どもたち」に幸せになってもらいたいと思っているらしい。
そのへんのギャップがとてもよく描かれていると思う。
第二章の「ブラック・ミドゥン」はとても不思議な世界。
現実世界のすき間に取り残された奇妙な場所。使われなくなった印刷工場や倉庫が立ち並ぶ廃墟の中、たった二人で暮らす少女と老人。彼らは闇のすぐそばで暮らしている。その昔、老人が泥の中から少女を見つけ、これからも泥の中から彼女の兄弟を見つけるというけれど、彼らのファンタジーは孤児院の子どもたちによって破られる。
泥の中も、母親の胎内も同じ暗闇という暗示がとても興味深かった。人間は誰もが深い暗闇の中を通って生まれてくる。闇の先にあるのは、「現実」という名の光の世界。
第三章はふたたび「ホワイトゲート」
孤児院に戻ってきた子どもたちだけども、彼らを待っていたのは悪いことではなかった。
見事なまでのハッピーエンドで終わる。
もともと暗い設定の話だから、暗く終わったら救いようがないけれど、でもこれだけ魔法みたいな奇跡がおきても違和感がないのはどうしてだろう。それがこの作者の腕と魅力らしい。
リアリスティックな筆運びとファンタジーのような奇跡が同居してしまう。自分が10代だったらはまるだろうな。

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