荻原規子
和製ファンタジーに挑戦・第3弾。
古代日本の神話の世界を舞台にしたファンタジー。ひどく密度が濃くて、読み終えるのに三日がかり。


基本的な構成は、不老不死の「輝(かぐ)の一族」VSよみがえりの「闇(くら)の一族」という図式。前者の頭は「輝の大御神」、後者の頭は「闇の女神」と呼ばれ、もともとは夫婦であり、すべての神々の親であったという。それが互いに敵対する存在となり、それぞれの神をあがめる者同士が刃を向け合う時代が舞台になっている。
その対立を何らかの形で解消する鍵を握る人物(あるいは半神)が、狭也(さや)と稚羽矢(ちはや)だった。狭也は闇の者でありながら輝に憧れ、稚羽矢は輝の者として生まれながら闇への道を探す宿命を課せられていた。2人とも、初めから自分の宿命や役割を知っていたわけではなく、さまざまな試練ののちに、それと知るわけで、その過程がこのファンタジーの中心になっていると言ってもいい。
「試練」とひと口にいっても、本当にいろいろな事件が用意されていて、狭也の身柄など、輝と闇の間を行ったり来たりでハラハラさせられるし、稚羽矢は稚羽矢で、あまりの天真爛漫ぶりに目まいがおきそうだし、良い意味で作者の手のひらで遊ばれているな、と思う。
だから、この物語で何が一番面白いかというと、舞台設定よりむしろ主人公たちの成長ぶりや心の旅。運命に翻弄されつつ、無力な自分を悔しがる勝気な狭也の奮闘、成長振りとか、狭也に見出され、監禁状態から抜け出した時には、世の中のことはおろか、自分のことにまで無頓着だった稚羽矢の変貌振りに感動して、最後は大団円でやはりよかったとため息をつき、これはYA寄りのファンタジーだなあと楽しんだ。

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