-ぼくらのブラスバンド物語-
藤田のぼる
予定では「西の魔女が死んだ」を読むはずだったけど、その前に、ちょいと必要に迫られて手にした本。
舞台は1964年、東北のある町。中学校のブラスバンドの面々が繰り広げる物語。


微妙に懐かしい空気が漂う話だった。1964年といえば、自分の母親が青春時代を迎えていた年代。東京オリンピックとかビートルズなんかがキーワードかな。
その時代に活動するブラスバンド部。楽器は学校から貸し与えられたもので、互いに譲り合って、あるいは先輩から後輩へと受け継がれてゆくような環境。
それに、大バス、中バス、小バスって!(笑) たぶん、大バスはチューバ、中バスはユーフォニウム、小バスはアルトホルンではなかろうかと想像する。
中学を出たらすぐに家業を継いだり、工場へ働きに出たりする生徒も少なくなく、その一方で高校を目指す生徒の間では受験競争が本格化しつつある時代。
自分は、その時代の空気の残り香を知っている。でも今の子どもたちに想像がつくかな。ついてほしい。
だから、時代の空気を感じさせるという意味で、新太郎が河原でトランペットを吹き鳴らし、近所の子どもたちを集めるシーンが一番好きだった。昔は管楽器の練習場所といえば河原。(今は、カラオケルームを安い昼間に借り切って練習、という手があるらしい)
この話で一番ユニークなのは、特定の主人公がいないこと。あえて中心になる人物といえば、指揮者を務める隆司だが、いろんなパートの部員の視点で、それぞれの事情が語られていくところが面白い。
さっと読み通すと、まとまりがなくて、「いったい何が言いたいんだー!」と思うこともないではないが、ブラスバンド(もちろんオーケストラとか、他の種類のバンドに例えてもいい)の面白さは、各楽器、言い換えれば各団員の個性が豊かでなおかつまとまれるところにあって、その多様性から来る味わいが楽しめるなら、これはするめのように、かめばかむほど美味しい物語だろうと思う。

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