ダレン・シャン
一年半ぐらいかけて、シリーズをほぼ全巻読み通した。最終巻を読んでやっと物語の輪が閉じて、伏線のあれこれがつながった。なかなかのスケールだ。


この話はもう、ハリウッドものと同じくらいどんでん返しの連続。裏切りに続く裏切りやら、衝撃の事実とか、明かされなかった真実とか、そんなものが次から次へと現れる。半ばうんざりしながらも最後までつきあったのは、結局、善きものと邪悪なものとの闘い、しかも圧倒的に後者が有利な中で、いったいどんな結末になるのか見届けたかったからなんだろう。
それに、これほど異形の者が数多く登場し、しかも魅力的に描かれているところが好きだった。吸血鬼ことバンパイアは珍しくないとしても、シルク・ド・フリークという奇怪なサーカスのメンバーが相当なものだ。ゴムみたいな身体の骨無し男だの、金属より硬い歯を持つ歯女だの、ヒゲを思いのままにあやつれるヒゲ女とか、全身うろこに覆われたヘビ男だの、イカサマなしの本物のフリーク(化け物)ばかり。彼らは堅気の世界でつまはじきにされても、このサーカスなら誰に気兼ねすることなく、自分の異形ぶりを武器にして生きてゆくことができる。パンパイアの道に踏み込んだダレンにとって、このサーカスは第二の家族みたいなものだ。むしろごく普通の人間の方が冷酷で頭が固い。この価値感の逆転がいい。
1巻を読み終えた時点で、ダレンと彼の元親友スティーヴが決着をつける話になるだろうとは思っていた。実際、8巻の「真夜中の同士」でスティーヴが再登場して、対決の流れになる。
でも、作者が用意していたのは、そんななまっちょろいレベルの話じゃなかった。とはいえ、2人の闘いはバンパイアとバンパニーズ(パンパイアの別種)をまきこみ、多数の死者(重要なサブキャラを含む)を出し、ひどく大掛かりなものになっているのだけど。
ダレンとスティーブの確執は最初から仕組まれたものだった。しかも人間を破滅に追いやる「闇の帝王」を生み出すための。その黒幕は「運命」という異名を持つ悪魔。
しかし、ダレンは悪魔にさんざん翻弄された末、最後の瞬間に悪魔の裏をかくことに成功する。それは同時に人類を破滅から救う道につながったらしい。ダレンの見事な判断力と意志の強さには、作り話とはいえ、感動を覚えた。これまで繰り広げられてきた殺伐とした戦いを帳消しにするなら、このぐらいひねりがきいていて素敵なラストが用意されていなくては。
実は、読みながら時間の扱い方が気になっていた。黒幕こと「ミスター運命」は、時間の中を自由に行き来できることになっていて、これは、作者がネタにことかいて時間旅行を物語に組み込んだのかと思っていた。でも、最後に物語全体のカラクリが明らかになって、なるほど、作者は最初からそういう設定にしていたのかと納得。たとえ途中で思いついたにしてもお見事。

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