たつみや章
これは、「月神の統べる森で」の続編。一度は出会い、友情を結びかけながらも別れてしまった二人の少年が再会するまでの話。


「ムラ」の民の中に生まれたポイシュマーと「ヒメカ」のクニに生まれたワカヒコは偶然出会ったように見えて、実はそうではなかったらしい。実は両者ともに「星の子」としての宿命を背負っていた。
この巻では、ムラの民とヒメカの民の暮らし振りや、社会の構造が具体的に出てくる。二つの文化の違いが見事なまでにくっきりと描き分けられているところに感服した。
縄文文化を模したムラの民の生活は、自然を神としてうやまい、また、一人の長の下にすべてのムラ人が平等に集い、重要なことは話し合いで決めるという、ある意味民主主義的なつくりを持っている。
一方海の向こうからやってきたとされるヒメカの民は、巫女を頂点とし、最下層には奴隷が存在する完全な階級社会。上下の関係はきびしく、権力の座をめぐって陰謀が張り巡らされる。
身寄りを失ったポイシュマーが、アテルイのムラで温かく受け入れられるのに対し、つらい旅の末にクニへかえりついたワカヒコを待っていたのは、巫女やヒコ(=首長)など権力者による冷たい仕打ち。抹殺されかけたワカヒコを救ったのは、ヒコの腹違いの弟、ホムタだった。彼は彼なりの野望があってワカヒコを味方に引き入れたわけだが、なかなかどうして、計算通りにことはすすまず、結局ワカヒコ一行は命からがらクニを脱出することになる。ワカヒコは人種をこえた友情ゆえに、そしてホムタは富をもたらす交易経路を求めてポイシュマーのいるムラへたどり着き、そこでこの巻は終わる。この先何が待ち受けているのか、それは次のお楽しみ。
前の「月神~」の時にも書いたように、この話では縄文文化と弥生(あるいは大陸からやってきた)文化の衝突が描かれている。でも、この対立は実は形を変えて現代まで続いているんじゃないかという気がする。自然と共生しながら暮らすライフスタイルと、あくまで富や権力を求めて活動するライフスタイルだ。「ぼくの・稲荷山戦記」を読むと、それがよくわかる。

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