作:たつみや章
これはどちらも「月神シリーズ」の後半2巻である。事件の流れからしても、この2冊はひとつの物語の上下ととらえる方がしっくりくる。
月冠~でシリーズは完結する。ともに「星の子」の宿命を背負って生まれたムラの民・ポイシュマと、クニの民・ワカヒコが友情を培いつつそれぞれの民の命運を背負って成長するさまが描かれている。

天地のはざま
たつみや 章
4062106736
月冠の巫王
たつみや 章
4062110555


さて、この2冊では、ポイシュマの暮らすムラの集団とワカヒコの故国であるヒメカのクニが、アヤという強大なクニに支配されようとするところを、何とかして救うというのが大きな筋になっている。
二人ともそれぞれの特性(ひいては彼らが背負っている文化)を最大限に発揮して、ちがうやり方で救おうとするところが頼もしい。
基本的に、ムラは狩猟・採取で生計を立て、森羅万象にやどる神々とその中でもとりわけ月神を信仰する人々で(縄文文化に近い?)、クニの人々は大昔に海から渡ってきたといい、稲作で生計をたて、日の神を信仰する人々だ。(こちらは弥生文化に近いかも)。
はじめ(シリーズの最初の2巻)は、この両者のぶつかり合いから生まれる誤解を和解に変えようとする努力が話の中心だったように思うし、それがとても興味深かった。
それが、後半にいたって物語は、「アヤのクニ」や山を焼いて略奪を生業とする民の登場により、悪者退治の様相を呈してくる。
ワカヒコはアヤのクニの懐へもぐりこんでアヤの首長が何を考えているか探り出し、隙あらば葬り去ろうと画策し、ポイシュマは多勢のムラの民とともにアヤのクニを外側から取り囲んで攻撃する。
戦いを重ねるうちポイシュマは本来の姿、オオモノヌシへと目覚めてゆく。あらゆる生き物の恨みつらみが大蛇となって彼に付き従い、破壊的な力を発揮する。
しかし、暴走を始めた大蛇を制御する力が彼にはない。そこで、月の神の息子、シクイケルが登場し、大蛇へと変貌したこの世の恨みや憎しみを一身に引き受け、白ヘビの姿となって消え去ったと言うのだが。
どうも、話が進めばすすむほど、本来なら盛り上がるはずなのに、冷めてしまった。
アヤのクニの王さえ倒せば世の中に平和が訪れるという、いかにも勧善懲悪な筋書きが自分的に気に入らなかったのかもしれない。なぜなら、欲とか憎悪は誰の中にもあって、いつ何時新たなアヤのクニが現れるかもしれないのだから。ただし、終章の記述によると、そういうクニが現れると必ずオオモノヌシが平定しに出かけたという。いわば、絶対的な力で保証された平和の世だ。やはり平和の維持には、そして正義をつらぬくにはどうしても力が必要なのかと最後には考え込んだ。
それとは別に。
現代でも私たちが、美しい月を見るとなんとなく心がざわざわするのは、月神の民の血を受け継いでいるからかもしれない、と思ったりした。

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