肩胛骨は翼のなごり 肩胛骨は翼のなごり
デイヴィッド アーモンド David Almond 山田 順子

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アーモンドが始めて書いた児童向け長編小説。カーネギー賞・ウィットブレッド賞受賞作。
タイトルと表紙の写真に惹かれて手にした本。退廃的ともいえるマネキンがなんとも素敵だったので。
モチーフは「翼」もしくは「天使」。西洋のファンタジーには天使が出てくるものが多い気がする。


アーモンドの作品は、これのほかに「ヘヴンアイズ」と「火を喰う男」を読んだけれど、これだけは文章のスタイルが微妙に違う。訳者あとがきには、レイモンド・カーヴァーの影響を受けた(もちろん他の作家からも)とあるから、まだ文体がカーヴァーに近いのだろう。でも、この書き方は、とても好きなスタイルだ。
スタイルはさておき、テーマ的にどれにも共通しているのは、見捨てられたものへの愛着。
この話の場合は、主人公のマイケル少年が崩れ落ちそうな物置の片隅に、しなびかけた、死を待つばかりの生き物を見つけたことから始まる。
その生き物というのが奇妙で、人の形をしていながら背中に羽を持ち、恐ろしく軽くて、まるでフクロウのように小動物を生のまま、まるごと食べてしまう。でも、好物は中華料理のテイクアウトとビール。指の変形はリウマチのせい。
彼は何者かと問われても「何者でもない」と答えるばかりで、ついには天使の「て」の字も口にしなかった。けれどちょっとした奇跡を起す力を持っている。
スケリグという名を持つらしい、この奇妙な生き物の話と平行して、マイケルの妹の話がすすむ。生まれたばかりの妹はどうやら生まれつき心臓が良くないらしくて、ずっと生死の境をさまよっている。マイケルは妹の命が助かるよう、いつも心の底から願っているけれど、彼には待つしかできない。
さらにもう一つ、隣の家に住むミナという少女との交流も同時進行で描かれる。彼女は家庭の方針で学校に行かず、自宅で母から教育を受けている。ミナが夢中になっているのは鳥の研究。観察、読書、スケッチ、模型作りなど、鳥に関することならとにかくやってみる。
物置でスケリグを発見したマイケルは、ミナから鳥の知識を学び、学校では進化論を学び、生まれて間もない妹からは命の鼓動を聴き取ることを学び、この世には奇跡と呼ばれるたぐいのものが存在するのだと知る。それは、ごくひそやかに、奇跡を知るべき人の間でしか行われないのだけど。
もし、人間がまだ進化の途上にあるとして、これから先、どの方向へと変わっていくのだろう。肩甲骨が翼の土台になる時が来たら、そりゃ素敵だろうと思う。少なくともマイケルにとってはスケリグという前例がある。

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