4198607516 アブダラと空飛ぶ絨毯―ハウルの動く城〈2〉
ダイアナ・ウィン ジョーンズ Diana Wynne Jones 西村 醇子
徳間書店 1997-08

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正直言って、1作目より面白い。主人公がまともな分別ある人間だからか、それともアラビアン・ナイトの香りとイングランドのおとぎ話の世界がうまく絡まりあったせいか。たぶん最後の大団円がこれまで読んだどの物語よりも意外性にあふれ、しかもこれ以上ないくらい円満な解決へたどりついたからではないだろうか。


今回の主人公は、前作の舞台となったインガリーからはるか南、アラビアの文化圏であるラシュプート王国で絨毯店を営む若者。彼は運命のいたずらで(他には何とも言い表しようがない)王女と恋に落ち、駆け落ちすることになる。が、彼女と手を取り合う直前、強力なジン(精霊)に王女をさらわれてしまい、さあ大変、という話。
おとぎ話のセオリーどおり、主人公のアブダラは姫君を救うため、幾多の困難をのりこえ、はるかな距離を旅しながら目的地へ進む。旅の友は、お世辞が好きな空飛ぶ絨毯と、一日に一度持ち主の願いをかなえなくてはならないという瓶に閉じ込められたジンニー(こちらも精霊の一種) いやもう、アラビアンナイトをパロディにしたとしか思えない設定。
ところが読み進むうちに、パロディが元ネタを越えた面白さを発揮してゆく。
アブダラは勇敢なヒーローとは程遠い、ごくありふれた青年。武器もなく武術の心得も無く、あるのは姫君への強い思いと機転のきく脳みそと商人には必要不可欠な用心深さ。
いっぽう、ヒロインとなる王女こと「夜咲く花」はひたすら恋人の助けをまつ深窓のお姫さまではなく、思慮深く果敢で、自分の力で状況を打開しようとする強い心の持ち主。
このカップルが実にいい感じ。ほどよく痴話げんかをしてくれるところも含めて。
サブキャラとして、アブダラの3人目(?)の旅の友となる敗戦国の兵士、そしてヒロインをさらった、ハスラエルという名の高位のジンが印象深い。特にハスラエルには色んな意味でじーんとさせられた。
面白いのが、話の舞台がアラブ世界からイギリス(インガリー国)へ移ったとたん、1巻のようなドタバタ騒ぎが始まったこと。前半はスリルに溢れてはいたけれど、物語的には整然と進んでいたのだ。それが、キングズベリーについたとたん、それこそバケツをひっくりかえしたような大騒ぎ。1巻は最初から最後までこんな調子だったなあと懐かしく思い返した。
で、ソフィやハウルやカルシファーはどうしたかって? 彼らも最後の方にちゃんと登場する。もちろん重要な役割を持って。

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