459106011X ナシスの塔の物語
みお ちづる 田村 映二
ポプラ社 1999-02

by G-Tools

とある児童書レビューサイト(http://d.hatena.ne.jp/yamada5/)で目にとまった本。気になったので図書館で借りて読んでみた。


舞台は、砂漠にほど近い、ナシスという町。砂漠と町を隔てているのは、石とナンバ草に覆われた荒れ地のみ。主人公は、パティー(パン)屋の後継ぎ息子、リュタ。
リュタの成長と町の発展がシンクロするように描かれるけれど、最後にはいかにも現代的社会的などんでん返しが用意されている。それが何かと言うと、環境とのバランスを見失った発展が支払うツケ、つまり自然のしっぺ返し。
中世的な手作業と人力による生産方法を維持してきたナシスの町に、「はぐるま屋」がやってくる。はぐるまは、使い方次第で限られた動力を何倍にも増やすことができる。歯車の力を借りて人々は「機械化」の道を進む。その結果、一種の産業革命が起きて、町は賑わい、人が増え、建物が増えて発展を遂げる。が、発展の影で、町を砂漠から守っていた荒れ地の石とナンバ草がどんどん減り、気候が変わり、ついには……。
という筋書き。その過程が、一人前のパティー職人になろうと悪戦苦闘するリュタの目を通じて描かれている。
この話にはもう一人、主人公がいる。町はずれのあばら家に住む、石運び屋のトンビ。彼は、いかにもどこか足りず、町の人々から見下されている。そしてそういう人間にありがちなのだけど、物事のうわべを突き抜けて真実を見る目を持たされている。
この話を読んでいる間じゅう、ビートルズの “Fool on the Hill” と、タロットカードの「愚者」が頭から離れなかった。砂嵐にびくともせず、天まで届くほどに高いナシスの「塔」を作ったのが、このトンビだった。
もしかすると、作者が一番描きたかったキャラクターはトンビではなかったのか。

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