4591078884 水の精霊〈第3部〉呪術呪法
横山 充男
ポプラ社 2004-05

by G-Tools

今年の冬に第2部を読んで以来、しばらく続きを読み損なっていて、やっと読了。
サブタイトルにあるとおり、迫力たっぷりの降霊術のシーンがこれでもかと出てくる。なのに主人公はそれをあくまでも催眠術や幻視の類だとして、まともに取り合おうとしないところが面白い。そのくせ、ここ一番というときに本領を発揮して、あっという間に除霊してしまうので、かなりヤな奴。


主人公の真人がクールに過ぎ、脇役に味のあるキャラが多いのは前と変わらず。前巻が極道とのからみ中心だったのに対し、今度は学生中心の、あやしげなカルト集団がからんでくる。下手に霊能力を持っている分厄介で、真人はできるだかかわらないようにするものの、ずるずると彼らのトラブルに引きずり込まれていくのはお約束。
真人もみずきも、はや大学生。自分たちの役割と宿命に目覚めつつあるが、まだそれを受け入れられずにいる。彼らの宿命は半端な重さではないから。特に、癒しの御巫として歩むしかないみずきの人生はかなり痛そう。彼女の唯一の心の支えが真人しかいないというのも、また痛い。もっとも、いるだけ有難い、という見方もあるが。
二人の揺れる心持ちの描写がとても見事。読んでいるこちらが歯がゆくなるほどだった。
この巻では、直接的に悪霊その他と対峙するため、登場人物が、霊や霊体に関するうんちくをあれこれ語る。そもそも、霊とは何か、どこから来てどこへ去るのか、それが神とどう関係しているのか、世界的に普遍性のある現象なのか……などなど。それはたぶん、作者の宇宙観と重なるものであるはず。
へぇ、となかなか説得力のあるものだったし、共感する部分も多かったが、理屈という力技でねじ伏せられたような気がしないでもない。まあ、受け取り方は個人の問題だからあまり突っ込まないでおく。
一番面白かったのは、自分が実際に行ったことのある土地がいくつも登場し、しかも物語上で重要なポイントになっていること。
話の舞台は主に京都~奈良にかけてで、進行に応じて四国や伊勢が登場する。
四国は卒業旅行で一周したし、お伊勢さんには何度かお参りしたことがある。京都の貴船神社と鞍馬山は昨年行ったばかりで、奈良県の天川村も昔キャンプで一泊したことがある。
物語の中で、「天川の水は素晴らしい水だが、無料で提供される湧き水を心無い業者がタンク車で大量に持ち去る」というくだりがあって、そこを読んだときは本当にドキッときた。うちの子どもたちが使っているひょうたん形のペットボトル、もともとその中には天川村の水がつまっていた……。いや、業者が正式に買い取っていればまだいいのだが。
物語の中で、奈良盆地は霊的に特別な場所とされているが、実際に足を運ぶと、なるほどと頷ける何かがあるのは確かだ。
あと、気になるところといえば、「この国の人々は腐りきっている」という意味の言葉がやたらに登場する。だから、禊ぎが、清めが必要なのだと。でも、田舎で暮らしていると、そんな実感はわかない。むしろ、人間も捨てたもんじゃないぞと思うことがよくある。
この物語の設定が、変にリアルに近いから違和感を感じるのかな。いっそ完全なパラレルワールドで展開してくれたなら、すっと物語世界に溶け込めるのに、と思う。例えば、攻殻機動隊のTVシリーズでも日本の社会問題を扱っているけど、あれは近未来世界というパラレルワールドの中で話を作っているから、安心して見つつ、これは現代日本の問題だぞ、と自覚できるのだ。

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