4062693704 トーキョー・ジャンヌダルク1 ─追っかけ!─ (YA! ENTERTAINMENT)
石崎 洋司
講談社 2006-10-11

by G-Tools

今度は、いわゆるYAに分類されている本を味見。
主人公たちは高校生。服装の描写、小道具としてのブログ、ヴィジュアル系バンドの舞台裏など、ディテールは申し分なかった。特にバンドの舞台裏事情については唸らずにはいられない。もちろん作者または近しい人が関係者なら難しくないけど。
そして、読後感はまさにこれ。
「飛ばない豚はただのブタだ」


物語は、ヴィジュアル系バンドの魅力に取り付かれて家出をした久美子という少女と、彼女を捜索することになった「トーキョー・ジャンヌダルク」のメンバーの動きが絡まって進む。
トーキョー・ジャンヌダルクというのは、三人の高校生、雪・サキ・舞が結成した「情報屋」だが、実質はたぶんトラブル解決屋だろう。
ごく普通の子として育ったはずの久美子には、実は危ないぐらい一本気で行動力があった。生まれて初めて手にした自由を彼女は夢のために使うと決めた。
実に計画的でソツの無い家出、気に入ったバンドに押しかけて自分をマネージャーとして雇えと懇願する行動力、メジャーデビューしたいと願う彼らを全力で支えたいという強靭な意志。
いやもう、まぶしくて直視できないぐらい。
それを感じたのはジャンヌダルクのメンバーの雪も同じで、妙な嫉妬と憧れを抱えつつ、久美子の捜索を始めることになる。
いろいろあった末、雪たちは彼女の居所も謎も何もかもつきとめるのだが、最終的に久美子は、何もかも捨てて、自分の夢を追って再び街の中へ消える。
どうして何もかも捨てなくてはいけなかったかって? そりゃ、これまで全力でメジャーデビューを応援してきた相手から「メジャーデビューはもういいから、二人でいっしょに暮らそう」なんて言われたら、100年の恋も冷める。次の恋の相手を見つけなくてはいけなくなったのだ。
で、感想。
正統派だなあと思った。基本で児童文学の路線を押さえつつ、ディテールのパーツを高校生向けに置き換えた感じ。
同じ女子高生とヘヴィメタを中心に置いた話なら、大槻ケンジの「縫製人間ヌイグルマー」の方がぶっ飛んでいて、文章にビートが効いていて、とことんB級でとても楽しめる。
じゃ、児童文学の基本は何だ?という話になるけど、ごく簡単に乱暴にまとめてしまうと、視点が子どもにあること。大人的視点で見る世界と子どもの視点で見る世界は違う。後者に寄り添いつつ、世界のあり方を示して見せるのが児童文学なんだろうなと思う。

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