B0010DHXYM エクスマキナ -APPLESEED SAGA- スタンダード・エディション
岸祐二 沢城みゆき 五十嵐麗
ポニーキャニオン 2008-03-14

by G-Tools

こちらは紛うことなき士郎正宗の原作。正直言いまして、↓のベクシルより10倍は面白い。
作品世界が堅牢なぶん、安心して見られる。前作に比べても設定や伏線がわかりやすいし、アクションの切れ味はいっそう良し。特に冒頭、主人公カップルがタッグを組んで暴れ回るシーンは爽快以外の何ものでもなく、見とれた。
(ああいう動き、文章化するとしたらどうすりゃいいんでしょうねぇ)
見とれたといえば、オリュンポスの壮大な眺めもよかったなあ。そういえば、主要キャラの名前って、ギリシャ風? アテネとかポセイドンはともかく、どうりで舌をかみそうなネーミングが多いのね。


さてさて、今回は冒頭からデュナンは、ブリアレオスとべったりくっついている。どんな風にハラハラドキドキへと持っていくのかと思ったら、うまい具合にバイオロイドという存在があった。(たいていは、恋人同士を引き離しておいて、片割れを追わせるのが常套手段でしょうけど、この話は引き離し方に少しひねりが入っている)
今や全身サイボーグとなってしまったブリアレオスのクローン(バイオロイド)が登場する。テレウスという名のバイオロイドは、嫌味なことに改造前のブレアレオスの容姿そのまんま。おまけに、負傷中のブリアレオスに代わり、新たにデュナンの仕事のパートナーとなる。(いきなりこう書くと、そんな無茶なと思われるが、そのあたりは、一応納得がいくようにちゃんと脚本上で根回しされている)
それでちょっとゆるめの三角関係が成立。テレスウは自分のオリジナルと対面しなくちゃいけないし(少なからぬライバル意識はあるはず)、オリジナルの彼女とコンビを組むわけだし。オリジナルの好みを引き継いでいたなら、彼だってデュナンに好意を寄せざるを得ない。(デュナンがこれまた、色んな意味で可愛いんだ)
最初は「こいつ何者?」とデュナン視点で見ていたが、だんだんテレウスが不憫になってきた。ブレアレオスに似ているというだけでデュナンに毛嫌いされるし、ブレアレオスにサシで勝負を挑めばこてんぱにやられるし、どんなにオリジナルに似ていようと、デュナンが思いを寄せるのは、ただひとりオリジナルのブレアレオスだけ。ラスト付近で、テレスウが自分のことを「つくりもの」と自嘲する哀しさ。そのひと言で惚れそうになりましたさ……(←決して容姿が好みだったからとかそういうわけでは……半分くらいあるけど)
唯一救いがあるとしたら、デュナンがテレウスをブレアレオスとは別の存在としてきちんと認めていたということかな。
「体の組成が同じだとしても、ひとつの個体にひとつの心」――これは攻殻ではゴーストとしてテーマになってたと思うけど、アップルシードの段階で答えは出ていたのか。
他にも、サイバーテロやそれを引き起こすウィルスのからくりなど、微妙に現代でもあり得そうな設定が良し。
ラスボスはねぇ……(ちょっと遠い目)。彼もまた道を踏み外した科学者だったわけだけども。世界を掌握したと確信した段階で潔く逝ってしまうんだもの。ずるいわ。
てことで、語りが多いことから察しがつきますように、娯楽大作として充分楽しめた一作なのでした。
ちなみに「エクスマキナ」とはギリシャ語の「デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)」から来ているらしい。「機械仕掛けの神」とは、古代ギリシャ演劇において、終盤で神が上方から降りてくるシーン(←これが機械仕掛け)、あるいはそのシーンによって大団円が訪れることを指すという。てことは、ラストバトルのあのシーンがそうなのか!
やっぱ、テレウスいいわ。影の主人公じゃないのかなぁ……。ああ、落ちにもならない。

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