4652071760 K&P
岡田 貴久子
理論社 1999-08

by G-Tools

図書館で児童書コーナーをうろうろしていたら、ふとタイトルにひかれた。J.アップダイクの「A&P」じゃなくて「K&P」? 興味をひかれてパラパラとめくってみれば、ビキニ環礁での水爆実験が題材のひとつになっている様子。主人公はマーシャル諸島のとある島で生まれ育った日系ハーフの少年。彼の母とその父(つまり祖父)は、死の灰が降り注いで人が住めなくなった島の出身だ。
この少年が日本の高校に通うことになって、「ポルックス」という名の少年に出会い、彼の風変わりな言動に手を焼きながらも友情を結ぶ。ポルックスとはもちろん双子座の片割れの名。となれば、「カストル」が登場するのはもう、お約束。
バリバリの社会派な物語かなと思ったら、意外にも話はどんどんファンタジー方向へ。美しい海や島の描写とともに、神の化身や神の使いが、ごく当たり前に登場する。
しかも南の島で神と共に暮らす部族の少年が主人公なので、ほとんど違和感はない。それに、彼らの敬う神は日本の信仰に近いアニミズム。自然の力を神に見立てているので、余計に馴染みやすいのかもしれない。
以下はクリティカルなネタバレにつき、開く際にはご注意を。


何より驚かされたのは、神でも精霊でもなく、アンドロイドの登場だった。某国(架空の社会主義国家だと思われる)で、最強兵器にもなりうるアンドロイドが開発されたものの、内戦が始まるや、開発した博士は彼らを引き連れて人知れぬ土地へ逃げ出したのだった。彼らの名前がカストルとポルックス。
神や精霊と心を通わす主人公少年は、アンドロイドとまで友だちになってしまったのだった。
しかし、神話と精霊と水爆とアンドロイドがひとつの物語の中に同じ重みで登場するとは! 
人智を越えた自然の力vs人間が生み出した、自然をも凌駕しようとする力
けれど両者は決して対決するばかりではない。
すごく美しくて不思議な話だった。

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