4167745011 死神の精度 (文春文庫 (い70-1))
伊坂 幸太郎
文芸春秋 2008-02-08

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伊坂幸太郎という人は、最近、別の作品が直木賞候補に上がっていたけれど、執筆の妨げになるとして辞退を申し出た作家ですね。最初はそれに気づかず、あとで知ってへぇ、だった。
この本を手に取ったのは、ひとえに死神の設定が面白かったからで、裏表紙によると①CDショップに入りびたり②名字が町や市の名前であり③受け答えが微妙にずれていて④素手で人に触ろうとしない、のが特徴だそうだ。彼の仕事は1週間かけて対象者の死の可否を判断すること。可なら対象者は8日目に不慮の死を遂げる。実際には手を下さず判断のみを下す。対象者がどうやって決まるのかは、彼の知るところではない。
他にもミュージックをこよなく愛するとか、いろいろ特徴はあって、とにかく人間をクールに見る視点が面白すぎる。最近、死神を扱った作品はアニメとかコミックとかライトノベルでよく見かけるけど、この作品の死神は良いね。


短編連作になっていて、死神を通じて6人の人生と人間模様が見えてくる。
どれもミステリー風味でいい具合にひねりが入っているのだが、意外なところで違う話の登場人物がつながっていたりして、「なるほど!」と膝を叩きたくなるような仕掛けがいくつも用意されている。
つくづく人間は愚かで謎だらけで情けない生き物だが、ほんの時たま神々しい瞬間を見せる。この連作の主人公である千葉という雨男の死神が担当する人々は、たいていが死の直前(←当人にはわかっていない)に人生の総まとめとでも言うべき最後の輝きを放つ。それが味わい深い。
自分的には2話目の「死神と藤田」が一番好きだったなぁ。藤田というのは、任侠に生きる昔ながらのやくざなのだが、正義感のある人間ほど組織からつまはじきにされるのが世の常だ。罠にはめられた藤田がどうするのか。ラストがあまりにも鮮やかで、胸のすく思いをした。
あとは人殺しをして逃走中の男と死神千葉との珍道中を描いた「旅路を死神」も捨てがたいな。

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