スカイクロラシリーズ2&3冊目にあたるこの2冊は、語り手が同一人物で話が続いているので、まとめて感想をアップ。

412500871X ナ・バ・テア―None But Air (C・NOVELS BIBLIOTHEQUE)
森 博嗣
中央公論新社 2004-10

by G-Tools

今度は草薙水素(クサナギスイト)の一人称語り。時間を遡り、彼女が現役パイロットだった頃の話。舞台はスカイ・クロラと同じ兎離洲(ウリス)基地。
同じ「僕」語りでも、クサナギとカンナミとでは、ずい分温度差がある。クサナギの方が、ずっと体温が高く、感情の起伏が激しい。何より大人の世界の汚れを受け入れたり受け流したりできる柔軟さがある。だからキルドレにも関わらず(それと自覚はしなかったが)恋をし、身ごもることができたのだろう。
二人の最大の違いは、カンナミは静謐を求めて飛び、クサナギは潔さを求めて飛ぶこと、かな。
折りたたんだ先は「ダウン・ツ・ヘヴン」の感想。

412500921X ダウン・ツ・ヘヴン―Down to Heaven (C・NOVELS BIBLIOTHEQUE)
森 博嗣
中央公論新社 2005-12

by G-Tools

空を飛び、命を賭けて戦うことを純粋に愛していたスイトは、その技量ゆえ上位のポストへ進むことを強要される。重力に逆らいきれず、空から引き摺り下ろされる彼女は結構気の毒。
最終的に彼女が空から降りようという気になったのは、彼女のまわりをちゃんとした大人が固めているからだろう。彼女の価値を知り、守ろうとする大人たちが。そういった大人のことは、それこそ「ライ麦畑の捕手」と呼んでもいいんじゃないだろうか。キルドレだって彼らのことはちゃんと認めている。
スイトが初めてカンナミに出会った時のこと(カンナミはこのことを覚えていないようだ)も書かれている。
彼女が戦闘中に負傷し、することもく病院の屋上をぶらぶらしていた時のことだった。不思議な目をした少年と出会い、その視線と仕草から彼もまた戦闘機乗りだと知るのだ。外側から見たカンナミの様子はとても興味深く、また彼の性格が立体的に浮き上がってきたのが面白い。
カンナミはキルドレの中でもさらに特殊な性格だったような気がする。純粋さにおいて際立っていたというか、観念的な世界に生きていたというか。
それに比べると、スイトはまだ世の中のことに関心を持てるし、現実的な分別も持っている。その分、スイト視点の文章は具体的な情報や社会的背景に触れていることが多くて読みやすい。何より、作者的に苦労が少なさそうだなぁと感じた。

広告