4652086172 オフェーリアの物語 (ミステリーYA!)
山田 正紀
理論社 2008-05

by G-Tools

図書館で新刊コーナーを物色していたとき、妙にひきつけられた本。
まずタイトルで「へぇ」と思い、(オディロン・ルドンの描いた「オフィーリア」を思い出したので)中をぱらぱらめくったら、風雅で美しくひびく日本語と不思議な異界の設定に吸い寄せられた。ルドンの世界を文章化したらこんな風になるのではないか。
もちろん人形使いならぬ「人形使(にんぎょうし)」という存在もいたく興味をひいた。


時代は恐らく明治。ちょうど和と洋の文化が入り混じる時代。
中心になって登場するのは、人形に心を移し、人形とともに「影歩異界(かげあゆむいかい)」に踏み込むことのできるリアという8歳の少女、リアの人形であるオフィーリア、そしてリアの保護者であり、旅芸人の影華(エイカ)、影華の想い人であり、人形祓い(魂が取り付いてしまった人形を祓う)の仕事を持ってくる風間。
人形に心を移せるリアの能力を人形使の能力といい、かつては影華も持っていた。でも、もうない。その理由はおぼろにしかわからないが。
リアたち一行が、人形の絡む怪事件を解いてみせるというミステリー仕立てになっているが、この話のキモはなんと言っても影歩異界だろう。
影歩異界は、現世である照座御代(かみおますみよ)と重なり合うように存在しているが普通の人間には見えない世界で、そこの生命は現世とは違うシステムで存在している。まるで「精霊の守り人」に登場するサグとナユグの関係だ。
でも、鮮烈なナユグとちがい、影歩異界はほの暗く鬱蒼とした言の葉の森に覆われ、魂蟲(たまむし)をはじめとする奇妙な生き物で満ちている。
言の葉というのは、単語がまだ言葉として意味をなす前の状態なのだという。言の葉が意味を獲得せず、ただの音の連なりとして存在するとき、それは蝶の形に似た虚無移動蝣(うつろううろつう)やトンボのような移動蝣蜉蝣(うつろうかげろう)という生き物になるらしい。
人形に心もどきが生まれるとき、そこには魂蟲が宿っているのだという。心もどきを持った人形は自由に影歩異界を旅することができる。それはまた人形に心を移した人形使もおなじ。
そして人の脳に魂蟲が着床して生まれたのが「心」なのだという。
異形の生命体に満ち溢れた影歩異界はどこか懐かしい。
ところで、この不思議な世界を生み出した作者は何者だろうと思って検索をかけたら、モンスターのような天才作家だと判明。今ごろ気づくなよ、と思わずセルフ突っ込み。

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