4199051546 イノセンス After The Long Goodbye (デュアル文庫)
山田 正紀
徳間書店 2005-09-06

by G-Tools

攻殻機動隊の続編「イノセンス」のノベライズ版ではあるが、映画本編の前日譚。設定こそ映画と同じだが、ストーリーは完全にオリジナル。
バトーの一人称で話が進む。義体(サイボーグ)の視点が興味深い。戦闘モードになったり赤外線モードになったり。世界の見え方は決してひとつではないといやでも意識させるようになっている。


彼が関わるのは犬失踪事件。それも彼の愛犬、ガブリエルがいなくなる。
どうやら犬、それも飼い犬の失踪は多発していたようで、しかし行方不明になったのが犬であるばかりに警察も誰も捜査しようとはしなかった。だが、バトーは本気で犬を探した。なぜならガブリエルが唯一、手の届くところにいる彼の愛する存在だから。
もちろん、その事件の裏に大物テロリストが関わっているというのはお約束。
派手な立ち回りはもちろん、義体のシステムやらマフィアやらテロリストがバリバリに登場するので、文体はおのずとハードボイルドになるのだが。
これがあの「オフェーリアの物語」と同一人物が書いた文章なんだろうかと最初のうちは驚きつつ首をひねった。でも文体に慣れるにつれ、落ち着いてみれば文章の底には同じものが流れているのがなんとなくわかる。
さらに驚いたのは、押井ワールドをまるで違和感なく体現しているということ。魂(ソウル)なるものが存在するとして、それがいったいどこに宿るのか。イノセンスはどこに立ち現れるのか。
面白いのは、犬や馬、クジラやイルカには魂があって人間(生身も義体も含めて)には魂がないという設定だった。人間とは結局化学反応や数式で書き表されるシステムの総合体にすぎないのだろうか。
そういえば「オフェーリア」では、人の心のことを、魂蟲が脳に着床したがために発生した病気のようなもの、と言い表していた。そして人形が持っているのは心もどき。
世界の二重性(別に3重でも4重でもいいのだけど)を扱っているという意味で、イノセンスとオフェーリアはつながっている。

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