4591104184 幻狼神異記 3 (3) (teens’ best selections 15)
スカイエマ
ポプラ社 2008-07

by G-Tools

読む前からとても楽しみだった。
前巻で狼霊と誓約をかわした健(タケル)と清明浄霊会がどうやって対決するのか。
予想通り読み出したら止まらない。今回もアクション多めだし、その場面がいちいちかっこいい。ハリウッド映画でも見ているようなノリだった。アニメ化されないかなぁ。もし忠実にアニメ化されたらR指定がつきそうだけど。
表紙イラストや挿絵は見るほどにクールだし絵の奥にストーリーが見える。この画家さん、好きだなぁ。特に中表紙の、CDショップで試聴している健の姿ががいい。彼はどんな音楽を聞いていたんだろう。ヒップホップとか似合いそうだけど意外とベートーベンの「月光」?マーラーも好きそう……(やめなさい)


今巻では結城実というフリージャーナリストが登場して、一種の狂言回し的な役目を果たす。彼女は清明浄例会と自衛隊との癒着をあばきだそうと、健やクラスメートで自衛官の父親を謎の自殺で失った葛城ゆかりに接近する。彼女と話すことで健には清明浄霊会の正体が見えてくるというしかけ。
当然健にも結城にも危険がふりかかってくるわけだが、そこはよくしたもので健の祖父の弟子という青年が助けてくれる。そして健に格闘の基礎も教えてくれるのだった。残念なことに結城は敵の手に落ちたのだけど、彼女が命がけで集めた情報は健の手にわたる。すると今度は健が狙われ、あまつさえ葛城ゆかりを餌に彼をおびき出すのだった。
そして月夜に繰り広げられるおぞましくすさまじい最終決戦。
もちろん、「正義は勝つ」じゃないけど、清明浄霊会はボスがたたきのめされ、影のボスは命を落とし、社会的には結城の働きで潰されてしまうことになる。狼霊と契約を果たし、暴力をコントロールできるようになった健は公立中学へ転校して一からやりなおそうと決意する。
ああやっぱりハリウッド映画だ。
さてと、ここから感想。
健くんのキャラクターが面白い。「水の精霊」の正人と「鬼にて候」の保くんを足して2で割ったようなところがある。正人のクールさを持ち、保くんの可愛さをもまだ残しているという感じ。作中で何度か出てくる「たけるちゃんて呼ぶな」というつぶやきには笑った。
3人に共通しているのは、真実をあくまでも自分の感覚で確かめようとする態度。誰の言説にも惑わされず、自分が確かだと感じたものしか認めようとしない芯の強さが魅力。
また、人間と動物霊を結びつけるというアイデアは興味深かった。健はたまたま狼霊と結びついているが、人はだれしも何かの動物を祖霊神として持っているという設定になっていて、健にはなぜかそれを見抜く力がある。人の魂は、(もしそういうものが存在するとして)地球あるいは自然の魂と根源的につながっているという考えがちらりとのぞく。
(そういえばRDも結論は似たようなものだった。<地球の意志と地球上の生物が水を介してつながったという結末)
ここまではいいとして、ラストバトルがどうも物足りなかったように思えるのは気のせいだろうか。物足りないというか、はしょっている感じ。
これまでのペースを思うと、本来は4巻で終わるはずだったんじゃないのかなぁと思う。
結城実がいきなり出てきてやたらしゃべりまくったなと思ったらすぐに消えてしまうし、葛城ゆかりとの健のつながりもいまいち弱い。なのに彼女を命がけで助ける羽目になる。
それより何より微妙な違和感を覚えたのが、陰陽石をめぐる戦いのシーンだった。肉体同士のバトルが精神的なそれへと移行するわけだが、正直なところ、バイオレンスアクションがいきなりファンタジーワールドに足を突っ込んでしまったという違和感がぬぐえない。魂がらみの世界を具象的に描くのはプロでも難しいということか。
それでも、これがアニメとか視覚のメディアで繰り広げられるなら違和感なく受け入れちゃいそう。というか、ぜひ動く絵で見てみたい。

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