4835442075 モーツァルトは子守唄を歌わない (fukkan.com)
森 雅裕
ブッキング 2005-12

by G-Tools

これは音楽書ではありません。完璧なまでにミステリーです。しかも抱腹絶倒もの。
モーツァルトの死の謎をめぐって名探偵ベートーベンと助手のワトソン チェルニーが音楽の都を駆け回る。サリエリ宮廷楽長はさしずめモリアーティ教授といったところ。他にもシューベルト少年をはじめ、音楽関係者がどっさり登場して嬉しい悲鳴をあげそうになった。
史実を巧みに組み合わせ、面白い謎解きと切ないラストが用意されている。
ウィーンの描写が生々しい。なにしろ、ナポレオンの占領下、ハイドンの葬儀がまともに行えず、何か月も経ってからやり直しをしたシーンから始まり、当時のワインに関するうんちくや墓地の事情、ウィーンの娼婦たちのエピソード、フリーメーソンと宮廷の生臭い関係まで登場する。


画像をひと目みればわかるように、イラストは「パタリロ!」の作者で、人をおちょくるようなベトベン御大の姿は、この話に登場する御大そのもの。管理人が抱くイメージとも史実とも多少のズレはあって当然だが、妙に世慣れたところと意固地な部分が同居するところや癇癪持ちな気質など、ちゃんと大筋は押さえてあると思う。どのくらい皮肉屋だったかは謎だが、当時のウィーンの住人なら、あのくらいひねくれた口のききかたをしてもおかしくなさそうだ。
まあ、本当にチェルニーと掛け合い漫才をしていたとは思えないが、この師弟関係の描かれ方が最高に楽しいのだ。
そうそう、これは蛇足を承知で書くのだけど、もしこの本を手に取る機会があったとして、内容をものすごく気に入ったなら、巻末のあとがきや「ボーナストラック」はあまりお薦めしない。もし読んでしまっても見なかったふりをしてもらえたら、と思う。世の中には「言わぬが花」「知らぬが仏」がふさわしい事態もあるということで。

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