4337330712 洗い屋お姫捕物帳―まぼろし若さま花変化
越水 利江子
国土社 2008-10

by G-Tools

なんて楽しい! 時代劇を高齢の方々だけの楽しみにしておくのはもったいない。もっと子ども向けの時代劇があっていいじゃないかと思ってしまった。
江戸の洗い屋職人の孫として生きるお転婆娘が、事件に巻き込まれ、解決してゆく過程で自分の出生の秘密が明かされ、本来の自分の姿を知る――こうやって筋書きだけ取り上げると、ものすごくありふれた話になってしまうが、この物語の中で、登場人物は確かに生きている。それぞれに運命の重さを背負いながら。


そう感じさせる理由のひとつが、江戸の町や風俗がきちんと分かりやすく描かれていること。
町の賑わい、橋から見える風景、登場人物の着物の柄や着こなし、それに言葉遣い。そういった描写を追ってゆくうちに、江戸の街にトリップして、お姫たちと同じ目の高さで行動をともにしているような気分になれる。
アクションシーンが徹底的にかっこいい。お姫はわけあって投げ縄の心得があるのだが、同心のスズメ俊平は剣の達人だし(でも気が優しい)、ここぞというときに現れてすぐに雲隠れしてしまう銀打ち新三という謎の手裏剣使いがいるし。ラスボス(?)と決着をつける三人の連携プレーは、それはそれは見事で、胸がすっとした。
さらに影の達人がいて、それは俊平の義母であるエンマのお雉さん。六尺棒を振り回し、雑魚連中をたちどころになぎ倒すなんて、作中では「鬼」とか言われていたが、女傑ぶりが素晴らしい。それだけに亭主を失った悔しさはどれほどのものかと思われる。
ちなみに「洗い屋」というのは、現代のハウスクリーニング業にあたる仕事だが、それがすでに江戸時代に存在していたなんて知らなかった。しかも大名屋敷の事情を知ると「ああなるほど」と納得すると同時に江戸時代の文化の奥深さを感じたのだった。子どもたち、こういう話から歴史に入ってゆけば、ただ授業で聞くよりずっと面白いのに。

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