4150103364 鋼鉄都市 (ハヤカワ文庫 SF 336)
福島 正実
早川書房 2000

by G-Tools

現在巷に溢れているロボット話は、すべてアシモフから始まったのだと実感した。ロボットやアンドロイドと人間の共存、人間を養いきれなくなった地球、ドーム都市、そして宇宙移民……。この作品にはSFの定番モチーフがぎゅっとつまっていて、なおかつ秀逸なミステリーでもある。これが書かれた年代を思うと驚くばかり。逆にこの半世紀、人間はいかほどの進歩をとげたのかと懐疑的になる。
ほんっとにアシモフ凄い。出会いを逃がさなくて良かった。
ストーリー的にはシンプルかつ王道。未来都市の様子や市民の「常識」が、日常生活の細部に至るまできっちり書き込まれていて感嘆するほかはなかった。
以下はあらすじ。


人口が80億に膨れ上がった未来の地球で、人口は大都市に集中し、大都市はドームの中に人間を詰め込むことで成り立っていた。何層にも重なった自走通路(動く歩道)、効率化の果てに共同食堂や共同浴場を持つようになった巨大アパート群、イースト菌培養によって作られた食料の代替品。市民はランク付けされ、ランクが上がれば自前の浴室やキッチンが使えるようになる。こういった設定は昔の共産主義を彷彿とさせる。(アシモフはソ連生まれのユダヤ人で、幼いころに家族でアメリカへ移住した)
未来のNYシティもまた同じで、ただ、他の都市と違うのはドームのすぐ外側に「宇宙市」という宇宙人のコミュニティがあること。ちなみに宇宙人というのは、地球外生命体のことではなく、かつて地球を出て他の惑星に住み着き、そこで独自の発達を遂げた元地球人。
とにかく彼らは何らかの目的を持って地球にやってきて、発達したロボットを都市に送り込む。人間はロボットに職を取られることを嫌がり、徹底的に排除しようとするが、宇宙人の方が軍事的に圧倒的な優位に立つため、正面きって反抗はできない。
そんな中、ひとりの宇宙人が宇宙市で殺されるという、政治的にものすごく微妙な事件が発生。その犯人を挙げるために警察総監じきじきに指名されたのが、イライジャ・ベイリという中級クラスの刑事。彼は宇宙人から提供されたロボットと組まされ、試行錯誤を繰り返しつつ、事件を解決に導く。
ドーム都市の人間として、ごくまっとうな価値観を持つベイリが、人間そっくりのロボット、R・ダニールと行動をともにするうち、ドームの中にいては決して得ることのできなかった広い視野・思考回路を獲得し、逆にベイリはロボット・ダニールに対して、聖書の内容を話すことで理性や計算を超えた道義心に近い価値観を教える。その過程が一番読み応えがあった。
昔、学生だったころ、ゼミの教官が「小説は人間の行動や心理の実験を行う場である」と語っていたのを覚えているが、アシモフのこの小説はまさに、壮大な実験場だと思った。人間を特定の未来世界に放り込んだらどんな反応を示すのか。何を与えるとどんな変化が生じるのか。変化の結果、どんな行動に至るのか。
世の中凄い作家がいるんだなぁ。

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