4150105588 はだかの太陽 (ハヤカワ文庫 SF 558)
冬川 亘
早川書房 1984-01

by G-Tools

うーん、画像がないのが残念。
そもそも、この本は絶版状態でどこの本屋(含むB00K〇FF)を探しても入手できず、ネットで見つけた中古はとんでもない値段(>_<) 地元の図書館にもなく、リクエストを出し、遠い町の図書館から借りてきてもらってやっと読むことができた。
こんなに面白い作品がなぜ絶版? 売れないからですか……。
「鋼鉄都市」の続編。NYシティの刑事、イライジャ・ベイリと人間そっくりのロボット、ダニールが再びタッグを組み、植民地惑星ソラリアで起きた不可解な殺人事件の解決にあたる。
何が面白いかって、極限までロボットを増やしたソラリアの文化。なにしろ人間一人に対して1万台のロボットが働いているという。ソラリアの「社会学者」に言わせれば、これは地球のギリシャ時代――スパルタの社会をモデルにしたというからすごい。ロボットは完璧な奴隷なのだ。そして人間は雑用をすべて奴隷にまかせ、ひたすら文化と芸術、学問に勤しむことができるというが……。


その結果どうなるかというと、人口が極端に少なく、誰もが自分の「領地」を持っていて、そこから一度も足を踏み出すことなく一生を終えることができる。日常的な労働はすべてロボットが行うことになっており、人同士のコミュニケーションは三次元映像を使うのだ。「誰かと散歩する」と言うとき、それは友人や知り合いの三次元画像といっしょに庭を歩くということを意味する。会議もお茶会もすべてこんな具合。
そこから生じるのは「生身の人間恐怖症」。孤立した空間に慣れすぎたソラリア人は、直接人と接することができないのだ。おかげで殺人事件の捜査のために地球から派遣されたベイリは、関係者に直に会いたいと申し出るたび、心底嫌がられることになる。
事件を解決してゆくうち、ベイリはドーム育ちから来る開所恐怖症を克服し始め、被疑者の女性は人との直接的な触れ合いができるようになってゆく。お互い、文化によって背負わされた殻を破りつつあるということだ。それが人として正しい方向であると二人とも信じている。結果として地球もソラリアも新しい一歩を踏み出すか? というところで話は終わる。
読みながらひしひしと感じたのが、ソラリアがあながち全く架空の世界ではないということ。作中でもベイリは言っている。宇宙で唯一ソラリアと似ているのがほかならぬ地球だと。地球人は集団でドームの中にこもり、ソラリアは個人がロボットにかしずかれながら領地の中にこもっている。
今の日本でもどうなんだろう。非リアルな世界に安住の地を求めて、現実世界とうまく折り合えない人が増えているあたり、ソラリア化しつつあると思うのだけど。

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