4102024115 黄金の羅針盤〈上〉 ライラの冒険
Philip Pullman
新潮社 2003-10

by G-Tools

壮大な冒険ものが読みたくなって、すでに映画化されている=面白さがある程度保証されている「黄金の羅針盤」を読んでみた。これはライラの冒険三部作のうちの第一作。
いやはや、ライラのお転婆ぶりにびっくり。住処であるオックスフォードの学寮内を地下から屋根の上まで探検するだけでは飽きたらず、男の子たちに混じって子ども同士の゛戦争ごっこに加わるわ、調子に乗ってジプシャン(河で暮らすジプシーみたいな集団)の持ち船を乗っ取るわと、やりたい放題。大人たちにはしょっちゅう叱られ、その分とても愛されている。


彼女がとんでもないお転婆なのは、血筋の影響が大いにあると後でわかるのだけど、それだけでなく頭の回転が速く、大人よりも肝が据わっている。だからこそ北極への遠征隊に加わることができ、鎧をまとうホッキョクグマを従えることが可能で、人さらいの組織に捕まえられた子どもたちを救出できた。冒険のスケールの大きさ、波瀾万丈ぶりは圧倒されるばかり。北極圏を舞台に人さらいの組織だけでなく、タタール人や魔女まで入り乱れての血しぶきが上がるような戦いが繰り広げられる。
ところでライラがどんな世界に住んでいるかというと、19世紀初頭のヨーロッパによく似た異世界。実在の世界との相違点といえば、人間には必ずダイモンという守護精霊がいること、北極圏には魔女やパンサービョルネと呼ばれる人間に近い知能を持つホッキョクグマの一族がいること、そして「ダスト」と呼ばれる謎の素粒子が存在すること。そのダストはどうやらオーロラ越しにつながっているもう一つの異世界から流れ出しているらしいこと。(ここから先の謎解きは次作へ持ち越し)
このダイモンがユニークな存在で、動物の姿をとっているが、それは持ち主の本質を表すもので、ただし子どものころは何でも好きな動物(時には昆虫!)に変身できる。そして喜怒哀楽を共にし、持ち主から数メートルしか離れられない。それ以上離れようとすると、持ち主もダイモンも共に激しい感情と痛みにさいなまれ、もしダイモンと切り離されるようなことがあれば、持ち主は廃人になるか死んでしまうかのどちらかだ。ダイモンは、人の魂の一部を為しているらしい。
確かに面白い設定だし、重要なアイテムとなっているダイモンなのだが、残念なことに存在する意味があまり理解できない。あたかも話を面白くするための設定のような気がするのだ……。それともダイモンがいる方が、絶対の孤独を知らずに人は幸せに生きられるというのだろうか。
この話がただの冒険談かどうかは、三作すべての設定が明らかにならないと何とも言えないな。もちろん冒険談としては最高級の面白さ。

広告