4046310324 ぼくとレギオスの旅1 歩行する都市 (角川つばさ文庫)
富士見書房 2009-06-12

by G-Tools

これは、先に紹介した「鋼殻のレギオス」の児童書版。世界設定はすべてそのままに、10歳くらいの少年が電子精霊(=歩く都市の心とでも言うべき存在)の子どもといっしょに家出をしていろいろな都市を見て回る成長物語。第二巻で完結。
実は、先に手に取ったのはこの児童書の方で、「歩く都市」という設定にひどく興味をひかれたのが最初。人類が生きていけないほど汚染されてしまった大地、人類がいなくなったあとの大地で我が物顔に振る舞う汚染獣。汚染獣から都市を守るために戦う「武芸者」。そして都市の中心には電子精霊という名の妖精王(?)がいて、都市をコントロールしている。子ども向けにしてはやけに重厚な設定だったので、ちょっと調べてみたら元本がちゃんとあったというわけ。


しかし、こちらの方が数段質が良い。すごくまっとうな小学生向けの本になってると思う。ところどころにいかにもYAっぽい言い回しが散在するけれど、鬱陶しいほどではなく、描写は心理描写も含めてとても丁寧で、何より手を抜かないけれどあくまで子ども視点から外れない世界の描き方がいい。お手本にしたいほどだった。
主人公のアッシュは、家庭内のトラブルがきっかけで自分のなりたいモノ探しの旅に出る。彼には、モノと話せるという特殊能力があるのだけど、それでも子どもの一人旅はいかにも心細い。そこへ電子精霊のステラが現れていっしょについて行くという。というのも、電子精霊の子どもはある程度成長すると各地の都市を見て回り自分の将来を決めなくてはいけないから。ちなみに、ふつうの人間は電子精霊とは言葉を交わせない。モノと対話できるアッシュだからこそステラとの旅が可能だった。そして小さいとはいえ、都市そのものと会話ができるステラのおかげでアッシュは機器をくぐり抜けて旅を続けることができた。このあたりの設定もうまいなぁと思う。
アッシュとステラは「放浪バス」を使って都市から都市へと発見の旅をする。たいていはトラブルに見舞われるが、何とか切り抜け、成長してゆく。その様子は昔のアニメみたいで心が和む。
途中でニルフィリアというナゾの女性と出会い、ともに旅をすることになるのだが、性格は最凶、力は最強という彼女の素性は明かされないまま。知りたければ、大きくなってから本編(または外伝)を読めということかもしれない。それはそれでいいんじゃないかと思う。少しぐらい解決されない設定を残しておいた方が想像の余地があって楽しい。でも、このシリーズはもっと続いて欲しいな。

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