4056051836 大人の科学マガジン別冊 シンセサイザー・クロニクル (Gakken Mook 別冊大人の科学マガジン)
大人の科学マガジン編集部
学習研究社 2008-07-30

by G-Tools

娘のために買ったハズが……。すっかりはまった。
付録のアナログシンセは、はっきり言ってチャチです。が、電気信号を合成して音色を作り出す仕組みを体験するには充分だし、ダイヤルを回して音色の違いを聞き取るだけでも面白すぎる。
秀逸なのは、雑誌本体の記事。インタビューの相手がYMOのメンバーや富田勲という豪華さもあるが、シンセの生い立ちと歴史を丁寧に追っているのがいい。


シンセサイザーは、現代音楽の試みの一つとして出現した。これに気づいたのが大きな収穫だった。
時代の最先端にいる作曲家たちは、次々と新しい音の素材を探しているわけで、それは19世紀も今も変わらない。例えばクラリネットが改良されれば、当時の作曲家たちは喜んで新しいクラのための曲を書く。例えばモーツァルトのクラリネット五重奏やクラリネット協奏曲のように。ベートーベンだってバルブ式ホルンが登場すれば、さっそく第九でH−dur(ロ長調)の音階を吹かせたりする。(※真偽のほどについてはこちら参照→http://zauberfloete.at.webry.info/200909/article_5.html)。ベルリオーズなんかはもっと規模が大きくて自分の理想の音を作るために信じられない規模のオーケストラを考案したし、幻想交響曲の中では弔い用に鐘を突かせたり、弦楽器にはコル・レーニョ奏法(弦を弓の木の部分でこするor叩くことで音を出す)を指示したりして目先の変わった音色を作り出している。また、ストラビンスキーが「春の祭典」の冒頭で、ファゴットに限界を超えそうな高音でメロディを吹かせたのは、それまでのオーケストラではあり得なかった新しい音色が欲しかったからかもしれない。
とまあ、それぞれの時代の最先端の作曲家によって音楽の実験が進んできたわけだが、20世紀になってからは電気の力を使って新しい音を作り出せないかと考える音楽家兼科学者が登場し、その結果いくつかの電子楽器が生まれた。テルミンしかり、オンド・マルトノしかり。そしてシンセサイザー。
電気信号を組み合わせることで音を作り出すためにはまず、「音」の成分を分解し、分析することが必要だ。音の性質、変化ののからくりを知り、それを電気信号で再現することでさまざまな種類の音を合成する。その過程で今まで聞いたことのなかったような音が作られ、例えば映画やアニメの効果音として使われるようになる。
素材としての「音」に興味を持つ人々がこぞってシンセに飛びつき、独創的な音を生み出そうと試行錯誤を繰り返した。その成果はたぶん現代音楽よりもロックやポップスの方面で世の中に広められたと思う。
すごいなぁと感動しつつ、正直なところ、電気で合成された音はどうしてもチープなイメージがぬぐえない。そのチープさ、軽さを売りにしたスタイリッシュな音楽なら全く問題ないのだが、下手に実在の楽器に似せようとしたとたん、しょせん本物の楽器のイミテーションね、みたいな、上から目線的な感覚になってしまう。例えば機能的に非常に優れたエレクトーンがオーケストラ風の壮大な曲を奏でてその場では感心しても、身体のどこかに違和感を覚えるのと同じだ。
音楽の本質は電気とはなじまないのかな。音楽=人間に快い刺激を与える音の連なりや組み合わせという定義をした場合の話だけども。
それとも自分の耳が頑固な保守勢力なんだろうか。そうなんだろうな。

広告