4062581264 中世音楽の精神史―グレゴリオ聖歌からルネサンス音楽へ (講談社選書メチエ)
講談社 1998-03

by G-Tools

12〜13世紀、急速に発展を遂げつつあったパリ周辺で、聖職者や大学生を中心に活発な音楽活動が繰り広げられた。新しい音楽形式が生まれては次世代の音楽に取って代わらる。当時の資料や残された楽譜を紐解きながら、当時の音楽や音楽家について解明してゆく。
一見難解に見える中世の楽譜の書式と音楽的思想は切っても切れない関係にあること、西洋の音楽がなぜとことんロジックにこだわるのか、その原点が明らかになる。


中世において、学問の中心は教会にあった。知識を身につけるには教会付属学校で教えを受けるのが一番だった。ということは、学者はほとんどが聖職者だった。やがて教会では面倒を見きれないほど学生が集まるようになると、自然発生的に大学の組織が生まれた。それが今ある大学の原型。
学校では数学や論理学など、「自由七科」を修めるわけだが、その中に「音楽」も入っていた。この場合、「音楽」とはあくまでも理論的な音楽であり、音の成り立ちや音階の構成などについて学ぶのであり、楽器の演奏や歌の技術を覚えるわけではない。歌の実技は聖歌隊で覚える。
マルチタスクな学者だった当時の聖職者たちの中には、音楽の知識を発揮してミサで使う曲を発展させる者が出来てた。彼らが「音楽家」の走りだが、専業ではないし、あえて名を残そうをしなかったので、現代にまで知られている作曲家はごくわずかだ。
彼らは、すでに存在する聖歌をアレンジしたり、長く引き延ばしたり、対旋律をつけて華やかにしたり。もちろん、ルールに則ってアレンジするわけだが、ルール自体が時代と共に変化していった。そして複雑なポリフェニーが登場した。
ポリフォニーが極限まで発達すると、今度はまったく新機軸のルネサンス音楽が始まるという具合らしいのだが、この本が扱っているのは、ポリフォニーの絶頂期まで。
読み終えて思うのは。
中世の大聖堂のミサを生で見てみたい。どれほど豪華なポリフォニーが立ち現れるのか、この耳で確かめてみたい。近代フランス音楽がリズム的にアレなのは、中世にポリフォニーでリズムの複雑さを極めたところに原因があるのではないかと、余計な妄想をしてしまった。ラヴェルの「古風なメヌエット」の奇異さだって、実はすでに中世に原型があったかもしれないのだ。

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