4195540518 TREE(ツリー) C.W.ニコル 著 宮崎駿 画
徳間書店 1989-09

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黒姫在住のイギリス(ウェールズ)人であり、作家・環境保護活動家として知られるニコル氏の著作。
約20年前に出版された本で、当時アニメージュで掲載されたエッセイをまとめたもの。表紙や挿絵を宮崎監督が担当しているが、その当時はトトロが完成する直前。写真を見るとお二方共に若い若い。
出版されたのは確かに20年前で、バブル時代の真っ最中だったけれど内容的には現在もほとんど古びていない。特にエチオピアでの体験を書いた、人間の営みと森林破壊に関するくだりは圧巻。


ニコル氏の森林に対する愛着/執着は、一部の人々にとって異様に映るかもしれない。
しかし、彼はウェールズ出身であり、ウェールズはその昔豊かな森林地帯であり、ケルト人が侵入するまではリトル・ピープルと呼ばれる、ドワーフやエルフのモデルとなった種族が狩猟・採取の生活をして暮らしていた土地だ。彼の中には、森の木々を人の友と見なすウェールズ人の血が受け継がれており、森に対する愛情はもちろん、知識も非常に豊富だ。そして森林の価値がいかほどのものか、環境にどれほど影響を及ぼしているのか嫌と言うほど理解している。だからこそ森の木々を破壊する人間たちがどうしても理解できず許せない。許せないので林野庁にケンカを売り、煙たがられる。
しかし、何があろうと手を変え品を変え、信念に基づいて森林を守ろうと動き続ける姿は素晴らしい、の一言につきる。いや、傍観者であってはいけないのだが。
また、ピグミー族とともに狩猟に参加したときの話、捕鯨禁止を憂慮する話など、人と環境に関する考察には激しく同感するもの多数。特にグリーンピースを堂々と非難する次のくだりには胸がすいた。

私には分かっている。グリーンピースのような過激派の連中が、私たちをどこへひっぱってゆこうとしているのか、いやいや現在もひっぱっていきつつあるのか。天然林とそこに住む野生動物の完全な破壊、これこそ彼らが私たちを連れていこうとしている終着駅だ。彼らが私たちをいかせようとしているのは、人間の作る食物のみに依存する生活である。ケチな産業資本家、狂信的な宗教人や政治家と並んで、彼ら過激なグループこそが、この地球という惑星にすむ人間の人間らしい生活をもっぱら破壊しつつあるのだから。

しかし、グリーンピースは今なおますます過激に捕鯨妨害工作を行っている。
それにしてもニコル氏のエッセイを読んでいると、どうしても息子の小学校の先生を思い出してしまう。水質パトロール隊の隊長を勤めた先生だ。この人も自分の足でデータを集め、危機感を持ち、社会に訴えようとするパワーがあるので。(ちなみにこの先生は前年度で定年退職なのだが、再任用制度により学校に残ることに……。よほどうちの小学校を気に入ったのだろうか。今年の夏も忙しくなりそうだ)

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