恋する新選組(2) 恋する新選組(2) (角川つばさ文庫)
越水 利江子 青治

「勝兄ぃ」こと近藤勇たちの後を追って試衛館を飛び出した空ちゃんが、京の都に入って苦労の末に彼らのもとへたどり着き、新選組が正式に結成されるまでが2巻の内容。
身体一つで物騒な京都へやってきた空ちゃんを助けてくれたのは、なんと「りょうちゃん」、つまり坂本龍馬だった。暗殺者が飛び交うぴりびりした京の空気の中、土佐のお国言葉がとても温かくひびく。
近藤勇の妹、宮川空は架空のヒロインなのに、隊士たちの中に混じっても本当に違和感がない。彼らと同じ時代、同じ空気を吸っているからかな。
彼女の目を通じて、京の町の血なまぐささがリアルに伝わってくる。うっかり人を斬る場面に行き当たってしまった時の怖さ!
天皇の名を借りて幕府を倒したい勢力が京都で暴れ回る。夜になると、町は密談や暗殺の場となるわけで。その勢力から京の町を守る役目を受けたのが会津藩。近藤勇ら試衛館のメンバーは会津藩の管理下で新選組を結成。そして京都を守る実働部隊となったわけだった。つまり事が起きれば真っ先に身体を張って町と人々を守らなくてはいけない。人の血を流し、自分の血も流れる仕事だ。
空は、そんな仕事に憧れの沖田が手を染めなくてはならないことに心を痛め、不安を感じる。でも憧れの人たちといっしょにいるだけで精一杯の彼女は、自分の存在が沖田を癒していることに気づいていない。そこがいいのだけど。


続く3巻では、まず表紙で隊士用の装束に身を包んだ凛々しい空ちゃんが目を引く。
隊士服の持つ意味について、土方さんのレクチャーが聞ける。派手なだけでなくちゃんと意味があるのだ。
中心となる内容は池田屋事件。空ちゃんが密偵役として活躍するさまが可愛らしい。本物の山崎さんも登場して、それが何気にかっこいい。(「銀魂」に登場するヤマザキさんはちよっとアレなので)

恋する新選組(3)

恋する新選組(3) (角川つばさ文庫)
越水 利江子 青治

この時代の京都を取り巻く状況はかなり複雑だけど、空の視点で見るのでずいぶんわかりやすい。だからこそ何が正しくて何が悪か、誰も確信が持てないまま動かなくてはいけない状況だということもよく伝わる。そんな中で、新選組は、空たちはどうするのか。彼女の次の台詞が重みを持つ。

「罪もない町の人が目の前で焼き殺されようとするのに、それは正義か悪かなんて考えるひまはない。見たら、助けるしかない。それが、きっと、人間がやれるぎりぎりのことなんだ」

新選組の動きとは別に、空と坂本龍馬の交流も対旋律のように描かれている。龍馬と新選組の接触はないけれど、空は新選組のメンバーだけでなく、龍馬と触れることで時代の大きな流れに目を向けてゆく。また、「いーちゃん」こと岡本以蔵のエピソードがひどく切ない。空の目には以蔵が時代に翻弄された挙げ句に命まで奪われたように見えているはず。こうして空はまた、人の生き方や時代というものについて深く感じることになる。
大事なのは、空の視点は読者の視点と重なるということ。この本を読むであろう10代前半の子たちには、空と同じように深い悲しみと憤りを感じて欲しいと思う。それから今の日本の状態に目を向けて欲しい。今、この時代で守らなくてはいけないものは何なのか。

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