4758410690 銀の犬
光原 百合
角川春樹事務所 2006-06

by G-Tools

声を失った祓いの楽人・オシアンと相棒の少年・ブランが彷徨える魂をしかるべき場所へ送り届ける物語。鎮魂の手段は、主にオシアン奏でる人間離れした竪琴の音だけども、それだけでは魂は旅立ってくれない。魂が地上に留まるにはそれなりの理由がある。その理由を解きほぐし、「もう大丈夫だよ」と安心させることで初めて竪琴の力が効いてくる。その「大丈夫だよ」と直接魂に告げる役目がブランの仕事。
この物語に登場する魂に悪意を持った者はいないし、悪意によって傷つけられた者もいない。ただ、お互い愛し合っているのにうまく伝えられず、気持ちがすれ違ったままに死んでしまったものだから、いつまでたっても心残りが消えなくて彷徨っている魂ばかり。
そんな短編が五つ収まっている。
ちなみに物語の舞台はケルト民話の世界。ヒースの茂る丘には夕暮れと共に妖魔や鬼が跋扈し、人は魔除けに守られた家の中で夜を過ごす世界。そこで得も言われぬ竪琴の音が響くとなれば、魂のふるさとに帰ったような心地よさがある。


あの有名な「スカボロー・フェア」を題材にした、妖魔と人間との恋物語も混じっている。やはりこの話が一番ツボにくる。恋物語だけでなく、設定すべてが切なすぎて涙も出ないくらいだった。
いつかはこの名曲をベースにした物語を書きたいと願う管理人。露骨に恋愛ものではなく、もう少しひねった形で。さらに楽器の達人か登場するのはお約束(汗)
そういえば、この短編集自体、ケルト民話の二次創作と見ることもできるなあと、今気がついた。

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