406149466X ゲーデルの哲学 (講談社現代新書)
高橋 昌一郎
講談社 1999-08-20

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世の中にはいくら考えても結論の出ない事柄がある。それを数学的に証明したのが、「アリストテレス以来の天才」と賞されるゲーデル(1906-1978)だ。彼は神の存在さえ理性的な方法で証明しようとした。彼の経歴や成し遂げたことを、できるだけ一般人にもわかるように書いた本。


ある島に、本当のことしか話さない正直者の村と、嘘しか言わない嘘つきの村があったとする。その島に来た旅行者が「私は正直者です」と語る村人に出会った。その人はどっちの村人か。
正解は、「その発言のみでは特定不可能」。
では、「私は嘘つきです」と語る村人に出会ったら、その人はどっちの村人か。
正解は「そのような村人は存在不可能」。
結局、どちらの村人も一文では自分たちの属性を証せない。
こんな思考パズルから話は始まり、気付いたら論理学の世界に足を突っ込んでいた。
「ぬきうちテストのパラドックス」にいたる頃には、これはよくある話なのに深く考えると泥沼だよなぁなどと感心しつつ、好奇心にかられて読み進んでゆくといつの間にか、ゲーデルの「不完全性定理」というラスボスの前に茫然とつっ立っていたという具合。
正直村と嘘つき村の村人が自分たちの属性を語れないように、人間は人間の真の姿を直接知ることはできず、神の存在を語るには神の上位に立つ存在が必要だ。たぶん、宇宙の起こりについても同じだろう。ビッグバン以前に何があったか、そして現在の宇宙はどんな姿をしているかを直に知るには、宇宙の外部に立つ視点が必要だが、宇宙の中に存在する人間にはそれが得られない。
直観的にはとてもシンプルな真実だけど、これを論理的にきちんと説明するには「不完全性定理」が必要だということだ。
そこからもう少し踏み込んで、世界のすべてを論理的に説明できるか、人間の頭脳の働きをすべて計算ではじき出せるのかというと、それはどうやら無理らしい(ゲーデルは実際にその証明を試みている)。ここに、演算ですべてを処理するコンピューターと人間の頭脳の違いがあるのだろう。攻殻機動隊で言う「ゴーストがささやく」余地は、ちゃんと残されているわけだ。

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