4652075022 カラフル (フォア文庫)
森 絵都
理論社 2010-03

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この夏、映画になってましたね。観てませんが、噂では主人公母のエピソードがごっそりなかったそうで。
これがどんな話かというと、死んでしまってこの世とあの世の境をふらふらしていた少年の魂があった。それが唐突に「抽選に当たりました」という天使のお告げとともに現世に戻って人生を「再挑戦」することになる。
少年が「ホームステイ」する身体は、小林真という、内向的な中学三年生。いじめで気持ちを煩わされていたところに、憧れの彼女の援交現場を見てしまったり、親の不倫を知ってショックを受けて鬱になり、半ば無意識に睡眠薬自殺を図ったところだった。
真の身体にホームステイする「ぼく」は、家族やクラスメート、憧れだった彼女などと注意深く接するうち、世の中は絶望ばかりじゃないことに気付いてゆく。ただ、明暗取り混ぜていろんな色があふれているだけなのだ。


最初の数ページで主人公の設定とルールが説明されている。その手際の良さにまず「へぇ〜」。
この作品の初版は98年。当時の若い子の絶望感がくっきりと出ている。努力とか競争に意味を見いだせなくなってきた世代。
98年といえば、援助交際とか自分探しの旅とかで盛り上がってた頃かな。
例えば、小林真の憧れの少女、ひろか。彼女は悪びれる様子などいっさいなく、欲しいものを買うお金が手にはいるからと、あっけらかんと援助交際をする。最初は援交の現場を観て動揺する真も、ひろかの話を聞くうち、彼女の頭の中がどうなっているのか、まったくわからなくなってくる。
また、真の母は次々と「自分の本当の力を求めて」とっかえひっかえ習い事をするが、結局は空虚なままで、行き着いた先は不倫であり、絵の才能を持つ息子を心の支えにするしかなかった。
でも、絶望を絶望として放っておかず、最後に救いの手が差し伸べられている。裏の裏は表だったというようなオチで、その甘さ、明るさは読者によって救いになることもあるし、かえって傷を深くすることもあるだろう。(例えば、読者が小林真よりはるかに酷い境遇にいる場合)
児童文学は基本的にハッピーエンドが歓迎されるけれど、大人と子どもの中間に立つ読者層をターゲットにしたYAは必ずしもそうではない。難しいのう。

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