4877867309 すずめの木笛 (鈴の音童話)
渡邊 るり子 山中 冬児
銀の鈴社 2011-07

by G-Tools

前作「ともちゃんと砂糖、そして……」と同じく、戦後の北九州が舞台。前作は重い内容を含む作品だったが、本作は戦後の生活描写が横軸、子どもたちの淡い恋が縦軸となって、甘酸っぱい仕上がりの物語。


駐屯中の兵隊さんとの交流、終戦前後の大人たちの慌てぶり、アメリカ兵からもらったチョコの話、その後まもなく給食として配給された脱脂粉乳の不味さ(60代以上の人ならよくご存知のはず)、当時は誰でも飼っていた(?)という頭ジラミと、その駆除薬のDDTの散布。そして久方ぶりに復活した村の秋祭り。
こうした戦後独特の風俗や生活の様子が、小学生の女の子、よし子の目を通して生き生きと描かれる。そしてよし子の日常には、いつも「由(よし)ちゃん」という幼なじみの男の子がいた。毎日のようにいっしょに遊んではからかいからかわれ、小さなケンカをして仲直りをする。
ところが3年生のある日、いつも仲良く遊んでいたはずの由ちゃんが、突然よそよそしくなってしまった。ろくに口もきいてくれない。その理由を知ったよし子はとまどうばかり。どうして大きくなると男の子と女の子は普通の友達でいられなくなるのか。
でも、とまどっていたのは由ちゃんも同じだったにちがいない。お祭りの日、彼はぶっきらぼうによし子にすずめの木笛をプレゼントするのだ。よし子にとって「すずめの木笛」が特別な意味を持つことを知っていたから。
時代背景は変わっても、子どもたちの、そして男女の心の機微は変わらない。そのことをしみじみと伝えてくれる物語。

なお、作者の渡邉るり子さんは、本作が発行される直前の6月28日に逝去されました。病さえなければ、もっともっと、終戦前後の子どもたちの生き生きとした世界を、そして戦争によって運命を変えられてしまった大人たちの悲哀を読ませて下さるはずでした。心よりご冥福をお祈りいたします。

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