4001140802 ミオよわたしのミオ (岩波少年文庫)
アストリッド リンドグレーン イロン・ヴィークランド
岩波書店 2001-03-16

by G-Tools

「長くつしたのピッピ」で知られているリンドグレーンの作品。冒険ファンタジーの基本的な要素が詰まった、美しくて切ない物語。

あらすじはこんな感じ。

孤児のブッセが黄金のりんごに導かれて「はるかな国」へ旅立つ→国王である父と会い、本当の名は王子ミオだと知り、親友を得て幸せな日々をすごす→何かに導かれて邪悪な騎士を倒しにゆく。が、それは千年の、さらに千年の昔から決まっていたことだという→恐ろしい思いをして「外の国」にある騎士カトーの城にたどり着き、さらに何度も死にそうな目にあいながら、やっとのことでカトーを倒す→その後王子ミオは「はるかな国」でずっと幸せにくらしましたとさ。時々孤児だったころの暮らしを思い出しながら。

恵まれない境遇の子どもが実は……という展開、選ばれた者として大きな敵をやっつけに行かなくてはならない、という展開。そしてお姫様はいないけれど代わりに無二の親友を得る展開。石をも切り裂く剣、姿を消せるマント、済んだ音色を出す笛と古い美しいメロディなど、小道具は基本中の基本のものが最低限だけ揃っている。

読者をドキドキハラハラさせる語り口は絶品。最後は絶対に大団円だとわかっているのに、ミオといっしょに恐怖や絶望を味わってしまう。ミオは絶望しそうになるたび、父が「ミオよ、わたしのミオ」と呼ぶ声を心の耳で聞く。そして恐怖を乗り越えてゆく。子どもにとって、親がいつも自分の身を気遣っていると信じられることがどれほど力になるか。もしかするとこれは親たちのために書かれた物語かもしれない。

とても楽しくて安心感に包まれた物語ではあるけど、最後まで読みきったとき、ふと「ミオは本当はどこにいるのだろう」と思ってしまった。ある日、忽然と「現実」世界から消えて「はるかな国」へ行ってしまったミオ。日本ならさしずめ神かくしというところか。あるいは夢想の世界へ入ったきり戻ってこなくなったのか、それとも死後の世界へ行ってしまったのか。何もかも満ち足りて幸せだけども、折に触れて現実世界のあれこれを思い出すミオを見ていると、ふと暗い妄想が湧いてくるのだった。なるほど、邪悪な騎士が「外の国」にいるのはそういうわけか。(本当は違うと思うけど)

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