これは三人の少女が紡ぎだす少しばかり過激な物語。

少女1  両親から愛情のかわりにお金を湯水のように与えられて育った弥生。誰かに自分を認めてもらいたくて仕方ないが、傷つくのを恐れて感情を封印し、嘘で身を固めるようになる。
少女2  両親から一方的な愛情と投資を受けて育ち、特にそのことに疑問を抱かず育った水晶(きらら)。「できない人間は努力が足りないから」という思考回路の、付けいるスキのない優等生へと成長する。
少女3  両親から愛情もお金(成長に必要な物質的なもの一切)も与えられず育った愛弓。精神的にも肉体的にも慢性的な飢餓状態、両者の飢えを満たすため結果的に恋愛ホリックに。(男の子をナンパしてくっついてゆけば何かおごってもらえる)

この三人の共通点は、パターンは三者三様だけども、人間関係でトラブルを引き起こし学校に居場所をなくし、学校にいられない=世界の終わり、みたいな気分になっていたこと。その後彼女たちは奇妙な縁でネット上で知り合い、「一緒に死のう」という動機でリアルに顔を合わせることになる。が、些細な手違いが重なって集団自殺に失敗し、次は「どうせ死ぬなら間違った世の中に自分たちの存在を見せつけてやる」とばかりに自爆テロを計画する。弥生の資金力と行動力があれば、中学生でもそれは可能に思えたが、実は落とし穴があって……という話。

個人的にはいっそ爆発して本当に星になってもいいんじゃないかと思ったが、それでは児童文学として問題があるだろうし、物語としても深みに欠けるだろうな。

読みながら色んなことを思い、考えた。大人たちの無責任、卑怯、独善。子どもたちのたくましさ、ずるさ、残酷さ。生きてることの無意味さと人の思惑を超えた運命のようなものの存在。自分の中では中学生と大人、どちらの立場にも立てるため、どのエピソードもひりひりと心に痛く時に懐かしく、また、かさぶたをいじるような、痛痒い快感すら感じた。

読後感としては、道中で何度か死にそうな目にあったけど振り返ってみれば意外と楽しかった旅(JOJO第3部みたい)を終えたかのよう。人間の醜さ愚かさを容赦なく突きつけられて、もうこの世界消していいよ、あんたたちも消えていいよ、って思えるのに最後には愚かさも醜さも受け入れてみようかという気になる。するとおまけとして星の輝き(=生きる希望)がもれなくついてくるよという感じ。いや「おまけ」では語弊があるかな。星の輝きを手に入れるためにはくだらない世の中、くだらない自分をまず認めよう、と言い換えたほうがいいかもしれない。とにかくそうして水晶(きらら)と愛弓は絶望を超えて星の輝きを手に入れた。弥生もたぶん、この二人に導かれて絶望と怒りに満ちた世界から脱出するのではないか、と思わせるところで物語は終わっている。

そう、ラストではクライマックスとなるべき水晶と弥生の対決が示唆されているのみで、描かれていないのだ。これが不満、あるいは残念だという感想をちょくちょく見かけた。実際私も「あれ? 作者の人、ここで息切れをおこしたのかな」と肩透かしを食らったように感じたのは確かだ。それでもどうなんだろう、このラストに至るまでの経緯をちゃんとたどり直してみれば決着は見えてくる。妄執に囚われたままの弥生と、すっきり(精神的な方面で)目覚めを迎えた水晶とでは、どちらが強いか。しかも弥生が最終兵器と思って大切に抱えているブツは、本人は気づいてないがフェイク品だ。歪んだ形とはいえ、親からの愛情をそれなりに受けて育った水晶が三人の中で一番強いというのが興味深い。

さらに、ひとり、主人公たちを食うほど人気のあるダークホースがいる。彼女は強烈な個性を持っているだけでなく、物語の中でひとり特別な立場にある。その名は衣紋ちゃん。まるで未来からやって来たかのようなクールさ・達観ぶりをもって、物語の外側に立ち、人間たちが愚かにも自分の欲望で自分の首を絞めるのを眺めている。基本的に放置プレイを楽しんでいるようだが、弥生に対しては「あんた、それはやりすぎ」とうまいこと歯止めをかけた。あるいは〈神〉が少女の姿をまとってこの世界に遊びに来ていたのかもしれない。彼女はそのくらい特殊。

ところで彼女のネーミングって「ドラ○もん」から来てると思うのだけど、もし当たっていたら少し嬉しい。

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