舞台は大阪の田辺市。小学5年生のヒロカのところへ同い年のいとこのたくみがやってくる。彼はヒロカの家の近所に住むおじいちゃんのところに2週間ばかり居候するのだという。たくみの目的は、戦時中に田辺に落とされたという模擬原爆「パンプキン」について調べることだった。
本はあんまり読まず、感覚でものを考え、近所のコンビニスイーツに目がないようなふつうの小学生であるヒロカと、小学生ながらに学究肌で論理的にものごとを突き詰めるタイプのたくみは、当然ながらそりが合わずケンカばかり。それでもおじいちゃんに導かれ、「戦争」について学び考え、それが現実に身近な場所で起きたこと、というのを受け入れてゆく。その成果はヒロカの自由研究として結実する。

あらすじを書くとこれだけだ。が、中身の濃いこと! 模擬原爆の知識をうまく物語に乗せて小学生にも受け入れやすい形に組み直していること、右にも左にも偏らず冷静に戦争というものを見る視点、感性の柔らかな子どもが「戦争」という暴力を身近なものとして受け入れる時の精神的な痛み。これが90ページ強(大人なら1時間以内に読めてしまう分量)の中に巧みに織り込まれている。

ヒロカは、自分の住む街にかつて爆弾が落とされたことを知ってまず感情的になるが、たくみから日本は被害者であると同時に加害者でもあると聞かされて、気持ちの置き場所に困って混乱する。戦争について調べれば調べるほど謎は増える。彼女は自由研究の発表をする際に、疑問点をいくつか挙げて「みんなはどう思う?」というコーナーを作った。「みんな」というのはもちろん、読者全員のことだ。

先日、この本をテーマにして読書会を開いた。それで気づいたのだが、40~50代というのは、リアル戦争体験を親や祖父母から聞くことのできた最後の世代であり、リアル戦争体験をした&親しい人から直接聞いた世代と、そういう接点がまったくない若い世代の中間、シーソーの支点にあたる立ち位置にいる。ある程度戦争の話は知っているが、生々しさはないので、むしろ冷静に下の世代に「戦争になると何がおきるか」を伝えられるのではないかという意見も出た。また、学校教育でシステマティックに日本がおこした戦争のことを教えるべきだという意見も出て、全員同意。(ただし、これをやろうとすると何を教え、何を教えないかで大騒動が起きる予感……)

以下、おじいちゃんのセリフ。

「なあ、ヒロカ。たくみはどっちの国に味方するとか、どっちの国が悪いとかそういうことを言いたいわけやない。戦争というのは、いかに効率よく敵国を負かすかなんや。つまり短い時間で、敵国にくさん被害をあたえたほうが勝てる。長引くと、自分の国もどんどん被害が大きくなるやろ。金もかかるし、死ぬ人も多くなる。そのためにどの国も戦争になったら必死なんや」

これはよくも悪くも実際に戦争を体験した世代が少なくなってきた(そして「おじいちゃん」はおそらく戦後生まれ)からこそ言えるセリフだろうとは思うけれど、こういう冷静な視点は大事だ。

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