毎年8月はバタバタしているうちに終わってしまい、今年も例にもれず、だったが、この時期に「この世界の片隅に」を読み切れたのはとても意味があったと思える。戦争のさなかにも普通の人々の営みがあり、普通の人々の営みが戦時中ゆえ無残に潰される。それでも生き残った人々は失われた人達の魂を引き継いで生きてゆく。そういう形でしか前に進めない。

「カエアンの聖衣」は、もともと7月に行われた名古屋SF読書会の課題本だった。参加する気満々で本は手に入れたものの、諸事情で行けなくなってしまったので、せめてものひとり読書会。巷では「ワイドスクリーン・バロック」と評されているらしいが、なんでもアリという意味では確かにそうかもしれない。一言で言えば「とあるスーツの大冒険」。主人公が衣服だなんていうSF作品は後にも先にもこれっきりではないだろうか。

「平行植物」は、もうスゴいとしか。この世界と微妙にズレたパラレルワールドにあるという「平行植物」を、研究者のレポートという体裁で紹介している。研究者の名前や経歴も本当にありそうでなさそうな感じで、読み進むうちに現実世界と平行世界の境界がぼやけてくる。レオ・レオーニといえば「スイミー」をはじめとする数々の絵本の作者として有名だが、まさかこんな素敵な書物をしたためていたとは。奇妙な並行植物の挿絵は、もちろんレオーニ氏の手によるもの。

O-bakeの本棚 – 2016年08月 (3作品)
カエアンの聖衣〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)

 
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