「忍剣花百姫伝〈6〉星影の結界」

459110821X 忍剣花百姫伝〈6〉星影の結界 (Dreamスマッシュ!)
越水 利江子
ポプラ社 2009-02

by G-Tools

ますます面白い! 一冊で2巻分の面白さ。とくに冒頭の迫力は圧巻。鳥肌が立ったほど。
NHKが目をつけてアニメ化の話、企画してくれないかなあ。魅力的なキャラクターは多いし(特に美形♪)「精霊の~」とは違う方向でバトルが格好いいんです。小学生の子達にはぜったい受けると思う。というか、自分がその年だったら必ずTVに張り付きます。
以下の感想は例によって、ネタばれ全開で語りますのでご注意ください。


今回の最大の見所は、神宝・星衣の出現と、八人剣のうち(代理ではなく)真の「七の者」が登場するところ。
これまで八忍剣「七の者」には、戦闘はまるでダメだけども癒しの技を持つ醜草(しこくさ)が代理として登場し、ほんわかしたムードメーカーの役を担っていたのだけど、今回は準主役。
本来の「七の者」は醜草の師匠である那扉鬼(なびき)で、彼は星衣とともに浮岩族の王の墳墓に生き埋めにされたという。その王の墳墓が物語の舞台になり、魔王復活の修羅場となる。
幼いころに那扉鬼に拾われて、術を教えてもらいながら成長した醜草の本名は、なんと「紫苑」。紫苑といえば昔流行った「ぼくの地球を守って」の影の主役だし、最近の作品では「No6」の主人公。ちなみにどちらも美形かつ切れ者。醜草の外見のイメージとは180度反対だけども、たぶん醜草の真の心を現すためにそのような美しい名がついているに違いないと思えてしかたない。
だって、那扉鬼が醜草に向かって「紫苑」と呼ぶひびきには、親が子を見守るような慈愛と厳しさがこもっていて、「私にはお前の本当の姿がわかっている、だから安心して精進しなさい」という語りかけが聞こえる気がしてとても切なかった。「True Colors」というシンディ・ローパーの名曲を思い出してしまった。”I see your true colros shining through~(略) so, don’t be afraid”って。
 切ないといえば、美女郎(みめろう)。彼は自分でも本当はどちらについたらいいのかわからなくなってきたらしい。彼が花結界を使うたびに切なくなる。花結界は守りと癒しの術。守りたいものがなくては使えない術のはず。それを使うというのは、人間として温かい心を持っている証拠みたいなものだから。
 一度は殺されたと思っていた兄の天魚(あまご)が生きていると知った今、美女郎が守りたいのはただ一人、天魚だけなのだが、そうするためには結局、敵(かたき)であるはずの八忍剣を守らなくてはならなくなる。その矛盾をどうやって乗り越えるつもりなのだろう。一度は深い孤独に落ち込んだ人間が、次第にそうではなかったと気づいてゆくとき、どんな変化を見せるのか。次巻(最終巻)が楽しみ。
 それから夢候(ゆめそうろう)のことを忘れてはいけません。彼も大活躍。
山陽道を下る「夢さん、捨てちゃん(←花百姫)」の迷コンビにどれだけ笑ったか!
夢さんは、本当に懐の深い不思議な色男。頼りがいのあることこの上なし。花町随一の人気者なのもわかる。大切な淡雪ばあさんをバカにした男(←実は某族の王だったりする)にきっちりお見舞いしてやるところなんか、胸がすっとする。
珍道中の中、まだまだ青い捨てちゃんに、色恋の機微をレクチャーしてあげればよかったのに……って、でも今の彼女には馬耳東風だね(笑)。
そうだ、女性には誰にでも優しく、そして魅力を見つけてあげられる夢さんが本気で惚れてしまった女性って、まだいないのかな。
 次巻で終わりだなんてもったいない。我がままな一読者としては、もう少し夢を見させて欲しいと思ってしまう。
煩い読者として、ひとつだけどうしても気になるのが、放射能を発するとされる「燐光石」。花百姫の体内にごくごく小さな破片が刺さっているという設定なのだけど、姫さまが特殊な体質でない限り、内臓がやられちゃってすでに命がない気がする。たとえ今、命はあってもDNAは致命的に損傷を受けているはずなので、子どもは産めくなりそうな……。どうする、霧矢?

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