「目の見えない白鳥さんとアートを見に行く」

仕事に追われる日が続くうち、気がつくと休日も仕事のことを考えるようになっていた。少しずつ脳内マップは仕事関係の領域が中央にせり出し、前々から大事にしていた趣味の領域――たとえば音楽とかアート関係のこととか、好きなジャンルの本のこととかが僻地に追いやられつつある。このままでは近いうちに別人になってしまう気がして、休みの日になると、できるだけ美術館に足を運んでその記録を書きとめておくようにしている。人のために書くというよりは、少し先の自分が読み返して、そんなこともあったなあと思い出す手がかりにするためだ。

そんな折に、某ブログサービスで読書感想企画を見つけ、課題図書を見ていくと、おや?と目に留まる本があった。それが『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』だ。以前に紹介文を見たことがあり、「インクルーシブ」が流行りだした今の時代に良さげな本だけどいつか機会があれば読もう、くらいのつもりでスルーしていたところ、「こんばんは。先日スルーされた”機会”です」と心のインターホンをピンポンされた格好だ。

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「Franny & Zooey」

学生のころ、サリンジャーの「ナイン・ストーリーズ」を読み終えたあと、次に手を伸ばしたのが、グラス・サーガに属する「フラニーとゾーイー」。
グラス・サーガというのは、ニューヨークに生まれ育ったグラス家の7人兄弟を軸に展開する一連の物語のことで、「ナイン・ストーリーズ」の一部と、「シーモア/序章・大工よ屋根の梁を高く上げよ」がこれに加わる。サリンジャー好きの間では、むしろ「ライ麦畑でつかまえて」よりも人気かもしれない。

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「刺青・秘密」

先日出かけた、猫町倶楽部・文学サロンの課題本。谷崎初体験としてはこれで良かったのか。良かったんだよな、たぶん。受けたショックの度合いが半端無かったので。

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「夜と霧」

私にしては珍しい再読作品。というのも、先日参加した猫町倶楽部の課題図書だったからで、最初に読んだのは確か学生の頃。
その時の感想は、予想ほど悲惨な描写はなかったものの、極限における人間の行動や心のあり方に衝撃を受け、かといってどう自分の中で折り合いをつけたらいいものかわからず、人生における宿題を課された心持ちがした。

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「フクロウからのプロポーズ」

ステイシー・オブライエン
日経ナショナルジオグラフィック社
発売日:2011-02-21

生まれつき翼に障害のあるメンフクロウのオス、ウィーズリーと、彼の育ての親であり、伴侶でもあった人間の女性、ステイシーの19年間の記録。
ナショジオのメルマガで「読者モニター募集」とあったので、応募したら見事に当たった。福を呼ぶと言われるフクロウの話なので縁起がいいかも。

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