「目の見えない白鳥さんとアートを見に行く」

仕事に追われる日が続くうち、気がつくと休日も仕事のことを考えるようになっていた。少しずつ脳内マップは仕事関係の領域が中央にせり出し、前々から大事にしていた趣味の領域――たとえば音楽とかアート関係のこととか、好きなジャンルの本のこととかが僻地に追いやられつつある。このままでは近いうちに別人になってしまう気がして、休みの日になると、できるだけ美術館に足を運んでその記録を書きとめておくようにしている。人のために書くというよりは、少し先の自分が読み返して、そんなこともあったなあと思い出す手がかりにするためだ。

そんな折に、某ブログサービスで読書感想企画を見つけ、課題図書を見ていくと、おや?と目に留まる本があった。それが『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』だ。以前に紹介文を見たことがあり、「インクルーシブ」が流行りだした今の時代に良さげな本だけどいつか機会があれば読もう、くらいのつもりでスルーしていたところ、「こんばんは。先日スルーされた”機会”です」と心のインターホンをピンポンされた格好だ。

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